2024/12/02 Mon.
ぐっすり9時間寝た。朝ごはんに野菜をたっぷり入れたスープを作り、3日分の野菜不足の埋め合わせをして、室内干しの限界に挑むような量の洗濯物を干し、荷解きもほとんど終わらせた。
相談支援事業所のスタッフさんが来て、支援計画を立てたのでサインをするようにとのこと。
寒い部屋でお茶を飲むと、本当においしい。冬中ぽかぽかに暖かい実家では、このありがたさに気付けなかった。マンションの部屋は寒くて床も冷たいけど、念願の一人暮らしが叶ったからこそのものだと思うと嬉しい。自分一人でマンションの一室に住んで、自分一人のためだけに家事やら買い物やらをして生活しているというだけでこんなに嬉しいのに、これで自分一人を養えるだけの収入を稼げるようになってしまったら一体どうなるんだろう。そんな嬉しいことがあっていいのか。でも、これが嬉しいことだというのは社会からそう思わされてるからだと思う。経済的に「自立」していることが当たり前で、社会の全員がそれを目指すべきだと刷り込まれているから嬉しく感じるだけで、本来は収入の有無や額なんか一切関係なく、誰だって健やかで楽しい生活を送る権利があるのに。仕事をしている人を指して「社会人」と表現することに一生反発していきたい。
旅行が楽しかったよという話題を祖母への手紙に書いた。イラストや写真、おみやげのポストカードなどを入れたら、ちょっと分厚い封筒になってしまった。喜んでもらえるといいなあ。祖母とも両親とも、一緒に暮らさず物理的に距離を置いてみると、衝突する機会がないから大好きなままでいられて嬉しい。実家だと、部屋と部屋を隔てる壁がなく、自室があるのにないみたいな状態だったから、ようやくプライバシーを保てる自分の部屋を持てた気分。
美術館で買ってきた額絵を壁に貼った。何もない壁に大きい絵を飾りたかったから、良いのがあって良かった。ゴッホのバラと、福田平八郎の「芥子花」。枕元に芥子があるのがポイント。
2024/12/03 Tue.
紛失したnimocaの再発行をしにソラリアステージへ行き、2日後以降に新しいnimocaを受け取れることになった。ひと安心。とらちスウェットに縫い付けるためのリボンを手芸屋さんで買って、ドラッグストアとスーパーに寄って帰宅。
旅行の日記を書いた。楽しかったことや考えたことを忘れたくなくて、あるいは忘れても読めば思い出せるようにしておきたくて逐一書いたら、3日間の日記は8,000字を超えた。頭の中がすっきり整頓されたような気がして満足。
2024/12/04 Wed.
就労移行支援。ヘルスケアについてのプログラムを受講。
大きなブロッコリーを買ったので、大量のミモザサラダを作った。りんご抜きのミモザサラダをお腹いっぱい食べたいという小中学生の頃の夢を叶えられる大人になれた(給食のミモザサラダにはりんごが入っていた)。ごはんを炊いてラップに包んで冷凍し、朝ごはんに食べるトマトスープも作った。
夜、キーウ・クラシック・バレエの「くるみ割り人形」を観に行った。混んでいるバスに乗りたくなかったし、nimocaも紛失してるから小銭の用意も面倒だしで、片道40分の道程を歩いて往復した。頭の中でずっとくるみ割りの曲を流しながら、イルミネーションできらきらした街路樹を眺めて歩くのは、なかなか楽しかった。暗くなってからの外出というものを普段しないから、特別感もある。なぜかチョコレートの踊りだけ冒頭が全然思い出せなくて、5分10分歩いた所でようやく思い出せてすごくすっきりした。せっかくバレエを観に行くのだからと、ロマンティックチュチュのようにふんわりした白いチュールのロングスカートと、タイツ生地の白いハイソックスと、バレエシューズに似たピンクのメリージェーンを身に着けた。後は、普通に黒いカーディガンとか、黒いコートとか。ちょっといかにもすぎるかなと思ったけど、隣の座席の人も似たような白いチュールのスカートを着ていたので、こういうことを考えたのは私だけじゃないのかもしれない。
初めて観るプロのバレエは素晴らしくて、夢のように美しくて、比較するのも変だけどディズニーランドよりもずっとわくわくすると思った(私はディズニーがあまり好きじゃないし、ディズニーランドに行ったこともないけど、なんとなく大多数の人が楽しいと感じるものの代名詞のひとつだと思っている)。自分もクララのように素敵な夢の中にいるような気分でずっと観ていた。ステージにいる全ての人が美しくて、その誰もを見ていたいので、目が8個くらい欲しかった。人生で初めて人間を美しいと思ったのは、3,4歳頃のバレエの発表会で見た研究科のお姉さん達のコーヒーの踊りだった。それから30年近く経って、初めて客席からプロのコーヒーの踊りを見たけれど、やっぱり美しかった。もちろん衣装も振り付けも違うけど、本当にきれいだった。冒頭のクリスマスパーティーの場面では、舞台の脇で喧嘩の動きをしている子どもたちがいてかわいかった。雪の精の踊りは見たことがない動きだったけど、ちゃんと雪だと分かるし、雪の結晶の形を思わせるような動きがあって感嘆した。我が家のふくちがよくやる、両手を手首の辺りでクロスさせた「瀕死の白鳥」ポーズも出てきた。ロシアのトレパックではなくウクライナの民族舞踊の場面があって、軽やかで力強い曲と動きがとても素晴らしかった。花のワルツは鮮やかなピンクのロマンティックチュチュがひらひらなびいて、美しさにうっとりした。今まで聴いたハープの音色の中で一番きれいだと思った。金平糖の女王のチュチュには、銀色のきらきらした飾りがたくさんついていて、動く度に照明が当たってちらちらと瞬いて本当に美しかった。明日は両腕が筋肉痛になるだろうなと思うくらい、力いっぱい拍手した。観終わってからも楽しい気分が続いていて、スキップかツーステップで帰りたいくらいだった。
2024/12/05 Thu.
区役所に行って、就労移行支援の利用が適切かどうかの判断をする窓口調査を受ける。担当してくれた職員さんは優しかったけど、見ず知らずの人に自分の病歴や悩み事をべらべら話すという状況がこの所ちょこちょこあったからか、なんだかぐったり疲れてしまった。夕べ寝不足気味だったのもあってか、気分が沈んだ。ソラリアステージに寄って、再発行したnimocaを受け取る。帰りに寄ったスーパーで見事な大根が一本200円で売られているのを見つけて、少しだけ持ち直した。
2024/12/06 Fri.
就労移行支援。日本語ワープロ検定の過去問。
昨日買ってきた大根を、鶏肉と干し椎茸と一緒に煮た。味がよくしみたすごくおいしい煮物ができた。こんなにおいしい煮物を作ることができる私という人間のことを、私はもっと大事にしていいはずだと思えた。
2024/12/07 Sat.
就労移行支援。動画プログラムを視聴。ひたすら眠かった。
この後オーケストラの演奏会を聴きに行くので、マンションには帰らずそのままホールへ向かうことにした。開演までは時間があるから何か本を読んで時間を潰そう、でも本を持ってくるのを忘れてしまった、これを口実に何か欲しい本を一冊だけ買っちゃおう、と魔が差してジュンク堂へ行くも、今まさに読みたいと思える本がなかなか見つからない。読んでみたい本は無限にあるのに、昔に比べてすっかり本を読めなくなってしまった自分には、とっつきやすさが本選びの最重要事項になってしまう。悲しい。1階から3階までを散々うろうろして、ようやくハン・ガンの『菜食主義者』をレジに持っていった頃には、ゆっくり読書できるような時間は残っていなかった。ドトール(一人での外食がなかなかできない自分にとって一番入りやすい店)でミラノサンドと温かい紅茶を頼み、結構ガーリックが効いている新メニューをもさもさと食べて、演奏会の会場に向かった。途中、クリスマスマーケットをやっているらしい公園を通ったので、それぞれの出店がどんなものを売っているのかちらっと眺めてみた。ほとんど食べ物屋さんだった。演奏会の曲目は、死の舞踏とカレリアとカリンニコフの交響曲第1番。死の舞踏は以前にも演奏会で聴いたことがあるし、カレリアはシベリウス好きの父親がいる家庭で育った人間にとっては子守唄といえるほど慣れ親しんだ曲だけど、カリンニコフはほとんど聴いたことがない。クラシックの演奏会に行って、知らない交響曲を聴いているという状況が新鮮だった。アンコールは、チャイコの眠れる森の美女。自分では作曲家と曲名が思い出せなかったけど、曲自体はすごく聞いたことがあるものだった。オーケストラの演奏会に対して色々ひねくれた気持ちやこじらせた思い出はあるけれど、やっぱりいいなあ。そう思って、パンフレットにチラシが挟まっていた九州交響楽団の定演のチケットを勢いで購入した。せっかく福岡に来たのだから、芸術に触れられる機会を逃すのはもったいない。
アクロス福岡にあるおしゃれな文房具屋さんを覗いて、松尾ミユキさんのカレンダーをすごく欲しいと思ったけどなんとか我慢して、イオンショッパーズの無印と百均で買い物をした。あくまで必要な物だけを買ったつもりではあるけど、お金を使いすぎている気がする。旅行にも行ったのだから当分は倹約しなければと思うのに、理性で物欲を抑えることがとても難しい。素敵な物、欲しい物が世の中には多すぎる。幼稚園の頃に母が書いてくれていた私の連絡帳には、美しい物への憧れや、素敵だと思う物に対するこだわりのようなものが強いといったような旨のことが書かれていた。美学や美意識のようなものがあると言えば、聞こえは良い(だから、美しくない自分の容姿を許せないんだと思う)。三つ子の魂百まで、三十路の今でもやっぱり魅力的な物への執着は捨てられない。好きなイラストレーターさんのカレンダーを飾りたいし、きらきらしたクリスマス雑貨を部屋に並べたいし、どうせ買うなら手頃な値段だけど気に食わないデザインの物より、これぞと思えるかわいい物を選びたい。素敵な物に対する憧れは多分そのまま持っていても構わないもののはずだから、その欲望を上手くあしらえるだけの収入さえ稼げるようになれればバランスが取れる気がする。それができないからずっと悩んでいる訳だけども。
帰宅して、昨日の残りの煮物と、賞味期限が過ぎたレトルトの煮物(これも大根と鶏肉の煮物)と、ごはんを温めて食べた。同じ大根と鶏肉の煮物だけど、私が作ったやつの方がはるかにおいしく、私の舌に合っていた。晩ごはんを食べ終えたのになんだかジャンクな物が食べたくて、カップ焼きそばを作って食べた。後悔するのは分かっているのになんで食べてしまうんだろう。物欲を抑えられないのと同じかな。
食器洗いや洗濯、お風呂を済ませて、せめて夜くらいは煩悩から解放された穏やかな時間を過ごそうと思って、ミルクティーとクッキーをお伴にIKEAのリラックスチェアでZINEを読んだ。他人の日記本っておもしろいなあ。途中に甘酢いかを摘まんでしまった以外は、良い感じの時間を過ごせた。いかもおいしかったけど。白湯を飲んで、ホットミルクも飲んで、この日記を書いて今日はおしまい。
2024/12/08 Sun.
潰した段ボール箱を束ねて、寒さと面倒くささにしばらく渋ってからリサイクルステーションへ捨てに行った。土日の昼間だけ回収しているので、今日を逃したらまた一週間、狭い部屋の隅に段ボールが陣取ることになる。マンションのエントランスに降りると、いつの間にか大きめのクリスマスツリーが飾ってあった。緑ではなく白い葉に、ピンク系のオーナメントが吊るされていてとてもかわいらしい。共用スペースにこんな素敵なものを用意してくれた人に一言お礼を伝えたい。
おやつに、山種美術館の近くで買ったパイナップルケーキとココナッツケーキを食べた。お店の方と少しおしゃべりをして、試食もさせてもらって買ったお菓子で、本当に良い旅行ができたなと思い出しながら頂いた。
夜は、文学フリマ東京で買ってきたZINEを読んだ。一人暮らしの部屋でもこもこの膝掛けにくるまりながら、リラックスチェアに座ってZINEを読む時間があまりにも幸せで、幸せだと思えたこと自体も嬉しかった。仕事もこの先もどうなるか分からなくて不安はあるけど、まあなるようにしかならないし、やりたいことをやっていくしかないなと思えてくる。10年前などは30代以降の人生なんてないものだと思い込んでたのに、30代の今はこの先も人生があるものだと思って、それについて悩んだり不安がったりしている。なんだか悩みの質が変わったというか、贅沢な悩みになったというのか。生きるのをやめるという選択肢を今は持っていない、選びそうにないという状態がとてつもなく幸せだ。