投稿者: naedokodesuka

週間日記(2024/12/30-2025/01/05)

2024/12/30 Mon.

 夜、私の足の上でとらちがぐうぐう寝ていた。起こしたくないので寝返りが打てず腰を痛めそうだったけど、それ以上に嬉しいし、何しろかわいいので仕方ない。
 お昼に肉うどんを作ったら、うどんつゆにだしを入れ忘れた。白だしを少し足したらおいしくなった。
 庭のさざんかの花を、飛んできたヒヨドリが食い散らかしていた。我が家の庭のさくらんぼを食い荒らす憎い奴だけど、赤い頬とぼさぼさの頭がかわいい。野鳥が飛んでくる庭があるというのは、やっぱりいいなあ。
 きょうだい達が帰省してきてくれた! 元気そうでとても嬉しい。

2024/12/31 Tue.

 父母ともようやく熱が下がる。調子の戻った母が例年通りおせちを作り始め、きょうだいの1人がそのアシスタントをしてくれていたので、その間に私は大量(5人分の冬服)の洗濯物を干したり畳んだり、軽く掃除したり片付けたりと他の家事をした。どうも、2024年も今日で終わりという感じがまだしない。
 台所が空いた隙に、栗でなくさつまいもできんとんを作ってみた。少し柔らかすぎた気もするけど、裏漉しを頑張ったおかげでなめらかなおいしいものができた。
 こうして長く帰省していると、福岡で一人暮らしをしていることを忘れそうだ。今も2階に上がれば、植物だらけの自分の部屋があるような気がする。
 夜は、無理して年明けまで起きていることもないかと思って11時頃には布団に入った。寝る直前まで飲み食いしていたのでなかなか寝付けず、夢うつつの中ジルベスターコンサートのアイーダが聞こえた。ここに来て、ようやく大晦日だという実感が湧いた。


 2024年の目標は、「頑張ろうとまた思えるようになる時まで、気力体力を温存しておく」というものだった。とても何かを頑張れそうという状態ではないので、頑張ってもどうにもならない時に無理して頑張ろうとしないための目標。いつかまた、頑張りたいと思える時が来るのかどうかは、正直なところ疑わしかった。自分に対する期待や信頼をなくしている。
 治療へのモチベーションも、すっかり失ってしまった。どうなれば「治った」状態と言えるのか、そもそも自分の困りごとは治るものなのか、治さないといけないものなのか、昔ならはっきり答えられたことが今となっては全然分からなくなってしまっている。それでも、働いて経済的に親から自立したいという夢はどうしても捨てきれない。

 臨床心理士になるという夢も、ようやく諦めがついた。通信制大学に編入した時は、確かに「もしかしたらできるかもしれない」という希望に満ち溢れていたはずなのに、この変化は何だろう。今後また何か別のことについて最初は「できるかも」と思えても、同じように無力感や劣等感でいっぱいになる時が来るんだろうか。でも、自分が思い描く心理士像にふさわしい「良い人間」にならなければいけないという自分へのプレッシャーがなくなり、悔しいことにほっとした部分もある。
 一応、認定心理士の資格は取得しておいた。これで、「心理学の専門家として仕事をするために必要な,最小限の標準的基礎学力と技能を修得している,と日本心理学会が認定した人」ということになる。

 障害基礎年金を受け取れることになり、遡及請求した分も口座に振り込まれた。「働けないから生きていけない、じゃあ死ぬしかない」という強迫観念が和らぎ、「この先も生きていけるかもしれない」と前向きに感じられるのが嬉しい。行政から「生きていていいよ」とでも言われたような気分。ただし、毎月6,7万円という額では経済的に自立した生活など営めるはずもなく、やはり家族に扶養されることなしに精神障害者が生きる選択肢は、国から想定されていないらしい。
 通院している精神科では、以前から服薬しているアリピプラゾールに加え、トリンテリックスという薬が増えた。これを飲み始めてから、なんとなく日中の活動量が増えた気がする。
 臨床心理士の先生によるオンラインカウンセリングも受けてみた。「話してみて良かった」と心底ほっとする時もあれば、言いたいことが伝わらずもやもやしたり、なんとなく引っ掛かるような物言いをされたりすることもある。ただ、全体的には「悪くはなさそう」という感じがする。いざという時に、お金さえ払えばプロに話を聞いてもらえるという安心感は大きい。

 障害年金の遡及請求で自分にとって大きな額を手に入れたことで、それを資金にある程度の都会へ出て仕事を探し一人暮らしをするという夢の実現を試みることになった。自分にはどうせ無理だろうと思って周りには話していなかったものの、オンラインカウンセリングの中で臨床心理士の先生に背中を押されたことをきっかけに、親や主治医の先生に話してみると、意外にも反対はされなかった。メリットとデメリットを思いつく限り洗い出して考えた結果、チャンスがあるなら挑戦してみても良いのではないかという結論に至った。
 実家にいれば生活はできるけれど、やっぱり親から経済的に自立したい。地方は車の運転ができないと仕事に就くことも通勤もかなり厳しくなるけど、都会に出れば車がなくても仕事もあるし通勤もできる。これまでのように仕事が長続きせずすぐに辞めることになっても、他に仕事はいくらでもある。どうせ老後も年金だけでは生活していけないし、だったら少しでも自活できるようになる可能性に賭けたい。一年前の夏は「普通に働けない」「治療を続けても人並みに働けるようになる訳ではないらしいことを認めたくない」と苦しんでいたのに対して、今年は「普通に働けないなりに、自分の望む生き方に少しでも近付こう」という風に考え方が変わってきている。同じ所でずっとぐるぐる回り続けているような気がしていたけど、少し時間を置いて見てみるとちゃんと変化はあるらしい。10年治療しても自分が理想とする「普通」になれないなら、もう自分にとっての「普通」を受け入れるしかない。

 そうして、10月1日から福岡市内で一人暮らしを始めた。32歳の誕生日を、一人暮らしの部屋で迎えることができた。今は就労移行支援に通いながら、新しい生活に少しずつ慣らしている。
 小さなトラブルやアクシデントもそれなりにありながらも、大学卒業後9年振りの一人暮らしを満喫している。自分一人のために料理を作り、自分一人が暮らす部屋を整え、自分一人が浸かる用に溜めたお湯で温まると、いかにも自分自身の生活を送れている満足感がある。夜に静かな部屋で本を読んでいる時、寒い日に温かい飲み物を飲んだ時などに、はっきりと「幸せ」を感じられる。あちこち出歩いて、買い物をしたり、美術館や植物園に行ったり、演奏会を聴いたり。よく歩くようになったので、体重も2ヶ月で3kg落ちた。
 これから仕事を見つけられるか、働き続けることができるか、一人暮らしできるだけの収入を得られるかなどといった将来の不安は、もちろんある。けれど、今は「どうにかなるかもしれない」という希望を持っているし、現状まだ困ってはいない。「悩みや不安があるにはあるけど、まあ、なるようになるんじゃない?」という、数年前の私がなりたくてなりたくてたまらなかった境地に現在の私が至っているらしい。
 「頑張ろうとまた思えるようになる時」は、ちゃんと来た。このまま現状の生活を続けていても何も事態は変わらないと思っていたけれど、良くも悪くも「何もかもがずっとこのまま同じ」ということはないらしい。それができないなら死にたいとまで思い詰めた「親からの経済的自立」という理想を叶えたいと願い、もしかしたらそれは実現できるかもしれないと自分の可能性を信じることができている。その状態が今後も長く続くとは限らないけど、状況というものは必ずしも不変ではないことを思い出すことができれば、気持ちが上向きになれない時もやり過ごせるのかもしれない。


2024年に読んだ本

2024/01/08『意識をゆさぶる植物 アヘン・カフェイン・メスカリンの可能性』マイケル・ポーラン、亜紀書房
2024/01/24『クルミわりとネズミの王さま』ホフマン、岩波少年文庫
2024/01/28『布団の中から蜂起せよ アナーカ・フェミニズムのための断章』高島鈴、人文書院(再読)
2024/02/12『くらしのアナキズム』松村圭一郎、ミシマ社
2024/02/15『死ぬまで生きる日記』土門蘭、生きのびるブックス
2024/02/17『暮らしの図鑑 フィンランド時間 季節の北欧生活44×基礎知識×実践アイデア』吉田 Öberg みのり、翔泳社
2024/02/19『ティンダー・レモンケーキ・エフェクト』葉山莉子、タバブックス
2024/03/09『私の生活改善運動 THIS IS MY LIFE』安達茉莉子、三輪舎
2024/04/20『脳のお休み』蟹の親子、百万年書房
2024/04/21『かわいいピンクの竜になる』川野芽生、左右社
2024/05/12『自分のために料理を作る 自炊からはじまる「ケア」の話』山口祐加、星野概念、晶文社
2024/06/22『長い読書』島田潤一郎、みすず書房
2024/07/28『生きのびるための事務』坂口恭平、道草晴子、マガジンハウス
2024/08/25『ワンルームワンダーランド ひとり暮らし100人の生活』佐藤友理、落合加依子、小鳥書房
2024/10/12『百年の孤独』G・ガルシア=マルケス、新潮文庫
2024/11/07『ケルト人の夢』マリオ・バルガス=リョサ、岩波書店
2024/11/29『家父長制はいらない』 「仕事文脈」セレクション、仕事文脈編集部、タバブックス
(計17冊)


2025/01/01 Wed.

 朝、皆でおせちとお雑煮を食べた。元々は、午後にきょうだい3人で祖母の家へ行く予定だったけど、きょうだいの1人が今朝発熱したのもあって、さすがに取りやめになった。
 毎年元旦に撮る家族写真の撮影が終わってスマホスタンドを片付けていると、かつて隣家があった空き地に何か動くものが見えた。野良猫かと思って期待しながら窓の外に目を凝らすと、野生の雉だった。しかも、雄が3羽もいる。喧嘩をしている訳でもなく、まとまってのんびり歩いている。写真は撮り損ねたけど、珍しい光景に家族でわいわい盛り上がれて楽しかった。

2025/01/02 Thu.

 ハンドミキサーがある実家にいるからと、チョコレートシフォンケーキを作った。薄力粉をふるうのをさぼったので少しダマになったけど、ふわふわでおいしかった。

2025/01/03 Fri.

 すみっコぐらしの日本旅行ゲームで盛り上がる。私はビリだった。
 インフルエンザに感染していない方のきょうだいが帰省を終えて戻っていくので、近くの新幹線の駅まで家族で送っていった。きょうだい2人が一度に戻ると寂しいけど、今回は1人ずつなので寂しさが薄れて助かる。
 夜、両親とすっかり熱が下がったきょうだいと一緒に、お茶やノンアルコールのチューハイを飲みながらお菓子を食べておしゃべりして楽しかった。1人分空いたダイニングの椅子にはきょうだいの代わりにとらちが座って、おしゃべりを聴き時折撫でられながらすやすや眠っていた。
 今年の目標は、「楽しそうなことは積極的にやる」にした。自分のような人間がやってはいけないのだと自分で刷り込んだ(あるいは世間から刷り込まれた)思い込みをなるべく退けて、楽しそうだと思ったこと、少しでも憧れを抱いたことには気軽に手を出してみようと思う。ZINE作りとか、編み物とか、パン作りとか、少し派手でかわいい服や小物を身に着けるとか。

2025/01/04 Sat.

 七輪で色々焼いて食べた。市販のフランクフルトを炭火で焼いてケチャップをたっぷりかけて食べると、お祭りの屋台で売られているフランクフルトの味になっておいしい。
 夜、なんだかしんどくなってしまって、AIが返事してくれるというメンタルヘルス系のサービスに書き込んでみた。案の定、返ってくる返事にイライラしてしまい、すぐにやめた。AIを用いたこの手のメンタルヘルスケアとはどうも相性が悪い。

2025/01/05 Sun.

 もう1人のきょうだいも帰省を終えて戻っていった。インフルエンザの症状はほとんど治ったようでひと安心。
 冬服がセールで安くなっていたので、ZOZOTOWNでいくつか注文した。せめてLサイズの服が着られるようになれば、安く買える服の選択肢が増えて助かるのだけど、人間が着るために作られた物(服)に合わせて人間が体型を変えるというのは順序が逆にしか思えずどうも釈然としない(今はXLを着ている)。
 とらちが甘えてきてとてもかわいい。人見知りが強く繊細な性格のとらちが、私に対して喉をごろごろ鳴らしてしっぽを震わせながらまとわりついてきてくれて、懐かれている実感があってすごく嬉しい。

週間日記(2024/12/23-12/29)

2024/12/23 Mon.

 おみやげを持って、近所に住む祖母の家へ行く。焼きたてのステーキと、お皿いっぱいのサラダを出してくれた。色々おしゃべりして、楽しそうにしていてくれたので良かった。
 ふくちが私のスカートの裾に興味を示すので、何だろうと思ったらスカートに草の種がたくさん付いていた。歩いた時に、その辺の草の種が引っ掛かったんだと思う。地元に帰ってきたなあと実感。
 晩ごはんにチキン南蛮を作った。フライヤーがあると、簡単に揚げ物ができて良い。

2024/12/24 Tue.

 毎年我が家ではこれと決まっているクリスマスのごちそうを食べた。私はきのこのクリームスープが入ったポットパイを作り、母がチキンを焼き、予約していたクリスマスケーキを父が受け取ってきた。ポットパイは我ながらおいしくできたし、チキンは皮がぱりぱりに焼けていて、ケーキもコーヒーとよく合っておいしかった。チャイコフスキーのくるみ割り人形を聴いて、ノルウェーのスローテレビの暖炉の映像を眺めて、例年通りのクリスマス。
 実家は快適だけど、ずっとここにいるとなると、自由もプライバシーもないので息が詰まるような気がする。でも、時々帰省してくる実家としては最高。

2024/12/25 Wed.

 リビングを中心に、母と2人で床掃除をした。掃除機をかけた時点でとらちは2階に引っ込んでくれたけど、好奇心旺盛なふくちに掃除中うろうろされてはかなわないので、その間ケージに入ってもらった。すごく不満そうに鳴いていた。
 無事に床掃除が終わり、ふくちも解放されてこたつで幸せそうに熟睡。時折起きて、隣にいる私のノートパソコンのキーボードの上に陣取っていた。

2024/12/26 Thu.

 せっかく蒸し器がある実家にいるからと、一度作ってみたかったチャーシューまんの材料をスーパーで買い集めた。豚バラブロック、ラード、オイスターソース、テンメンジャン、黒砂糖。後は家にある物で何とかなりそう。まずはチャーシューを作るので、調味液を作って豚バラを一晩漬け込む。調味液がすごくおいしそうな匂いだった。
 年に一度の予防接種を受けるべく、ふくちを動物病院に連れて行った。行きの車の中では悲しそうに鳴いていたけど、病院に着くとおとなしくいい子にしていた。5種のワクチンを打ってもらった。帰宅して少しすると機嫌を直してくれたようで、お気に入りの籐椅子の上で気持ち良さそうに昼寝を始めた。

2024/12/27 Fri.

 昨日漬け込んでおいたチャーシューをオーブンで焼く。故宮博物館の肉形石のような、おいしそうなチャーシューができた。強力粉やイーストを使って生地を作り、チャーシューを刻んで香味野菜と炒めてあんを作って、包んで蒸してチャーシューまんの完成。包むのがすごく難しくていくつかは成形に失敗したけど、味はとてもおいしい。手間をかけただけある。蒸したてのおいしいチャーシューまんをお腹いっぱい食べるという密かな野望を叶えることができた。
 夜、なんだか疲れてしまって、ひたすらスマホを見ていた。TwitterのおすすめTLを何度も読み込んで興味のないツイートを眺めたり、インスタで昔の知り合いのアカウントをわざわざ探して落ち込んだり。こんなことしなければ良いのにと自分でも思う。

2024/12/28 Sat.

 お昼ごはんに、昨日のチャーシューの残りを使ってあんかけ炒飯を作ってみた。見よう見まねでも、それなりにおいしくできた。チャーシュー自体は漬けて焼くだけで作れるので、手軽でいいな。
 夜、お風呂に入るのがだるくて面倒くさくて、ただただスマホを眺めていた。10月に一人暮らしを始めて以来、動けるし家事もできるし、お風呂にも入れるし、死にたくならないしで自分にしてはかなり調子が良かったものの、帰省して実家で1週間ちょっと過ごした所、なんだかぐったりしてきてしまった。福岡にいた時は「先のことはどうなるか分からないけど現状まだ困ってはいないし、案外なんとかなるのかも」と思えていたのが、地元にいると「なんか、駄目かもしれない」と思えてくる。こういう時、支援職の人に相談しても良いのかもしれない(事業所がまだ年末年始の休みに入っていなければの場合)。就労移行支援や相談支援のスタッフさんからは、何かあったら電話やメールをするようにと言われてはいるけれど、自分からSOSを出すことができるなら、これまでこんな苦労をしてくることはなかった。「別にこの程度大したことはない」と本心にしろ強がりしにしろそういう考えで押さえつけて、何ともないと思おうとしてしまう癖が染み付いている。とらふく会いたさ(と祖母喜ばせたさ)に長めに帰省することにしたんだけれども、まだ2週間もある。いけるだろうか。Blueskyにぶちぶちと愚痴を書き連ねる。次からは、帰省は長くて1週間程度に留めておいた方が良いのかもしれない。観葉植物も枯れるし。

2024/12/29 Sun.

 父母が発熱。病院での検査の結果、インフルエンザA型とのことだった。私だけどうともないので、家事をしたり、病人用に雑炊を作ったり。
 夜、疲れて動けなくなって、22時頃にようやく食器を洗ってシャワーを浴びて寝た。

週間日記(2024/12/16-12/22)

2024/12/16 Mon.

 早朝に、非常ベルのような音が外から聞こえた。非常ベルかどうかも分からないけど、どうやら近くの建物から聞こえてくるらしかった。もしかして火災か何かだろうか、この建物ではないようだけど部屋の外に出るべきなんだろうか。誤作動かと思おうとするのは正常性バイアスによるものだろうか。布団に潜ったままそわそわしているうちに音は鳴りやんだ。安心して二度寝した。
 郵便局で用事を3つ済ませた。自分が今住んでいる部屋の前住人宛てのはがきが来ていたので、その旨を伝えて窓口にはがきを渡した。今回の帰省は少し長くなるので、狭いポストがチラシでぱんぱんになることを考えて、郵便物を止めてもらう手続きもした。それから、ゆうパックの一番大きいサイズの箱を買って帰宅。冬服やおみやげがかさばるので、荷物をゆうパックで送ることにしてみる。郵便局はマンションから徒歩5分程度の近い場所にあるものの、段ボール箱を持って歩くと風を受けて歩きにくかった。葉っぱを運ぶハキリアリの気分。
 段ボール箱を組み立てて、帰省の荷造りをした。服が重い。郵便局に持ち込もうと思っていたけど、これは集荷に来てもらった方がいいかも。
 意を決して、最も嫌いな家事のひとつであるお風呂掃除をやっつけた。頑張った。勢いで湯船にお湯も溜めた。ものすごく温まった。冷えに冷えていた身体を温めると、分かりやすく幸せを感じられる。幸せだと思える頻度が、一人暮らしを始めて以来明らかに増えている。幸せが増えたというより、それに気付けるようになったのかもしれない。いつでも暖かい実家にいると暖かさのありがたみに気付けないけれど、築30年の冷え冷えマンションに住むと、温かいお風呂や温かい飲み物が本当にありがたい。
 先週買った温湿度計が役に立っている。室温が16℃前後になるとさすがに寒いので、一人だと電気代を考えて渋りがちになる暖房をつける目安になっていい。エアコンの音が少しうるさいけど、20℃程度にもなればかなり快適。

2024/12/17 Tue.

 どんどん物が増えていく本棚を整理したり、デスクやデスクチェアの緩んだねじを締め直したり、長いこと着ていない服を搔き集めてごみに出したり。
 相談支援事業所の方から電話がかかってきて、就労移行支援の受給者証ができたとのこと。無事、就労移行支援を利用できることに決まったらしい。
 ゲーム「刀剣乱舞」の連帯戦が始まった。これで新刀剣男士まで入手すれば、刀帳にある195振全ての刀を揃えることができる(現時点で、抜丸と道誉一文字が不在)。超難周回編成を考えた。

・1,2戦目:青江/歌仙/九鬼/富田/後家/孫六
・3~8戦目:江雪/石切丸/雲生/福島/稲葉/鬼丸
・9,10戦目:宗三/五虎退/丙子/火車/大慶/実休

2024/12/18 Wed.

 就労移行支援。情報処理技能検定の問題があったので、4級と3級をやってみた。ROUND関数というものを覚えた。数字が苦手なのでExcel自体になんとなく苦手意識があるけど、テキストを読んで関数をひとつ理解することができたので良かった。
 Pixiv FACTORYで注文していたスウェットが届いた。とらちの写真が大きくプリントされていて、とてもかわいい(とらちが)。買っておいたリボンを蝶結びにして、安全ピンでスウェットに取り付けた。赤いリボンがとらちに映えて、やっぱりかわいい(とらちが)。リボンを外してスウェットは洗濯。着るのが楽しみ。
 ゲーム「魔法使いの約束」の5周年ストーリーを読んだ。読めば感情を大きく揺さ振られるだろうことは分かっていたので、読むのに体力が要ると思って先延ばしにしていたのだった。腹を括って読んでみると、やっぱりとても良かった。今回は派手な戦闘や敵ポジションのキャラなどはなかったけど、キャラクターの関係性をメインにしてこんなにおもしろいストーリーを作れるなんてすごすぎる。一番好きなキャラクターであるオーエンはもちろんのこと、どのキャラも好きだなあと思える話だった。おもしろかった。

2024/12/19 Thu.

 就労移行支援の事業所の人と、相談支援の事業所の人とで面談。自分が伝えたいことと向こうが解釈した内容が微妙に違っていて、その修正が難しかった。でも、いかにも生身の人とコミュニケーションを取っている実感が湧くし、何より他人が自分のために時間と手間を割いてくれるのはありがたい。「人に笑顔を振りまけるし、言葉遣いも柔らかくて会話の中での反応も速いから、面接もすぐに通ると思う」と言われ、そんなに褒められる機会はないから内心かなり照れてしまった。かつては面接試験を受ける度に「今すぐ窓から飛び降りて、死んででもこの場から逃げ出したい」と思っていた人間が、「面接もすぐに通る」なんて言われる日が来ようとは。もちろん、実際に面接を受けてみないことには分からないけども。

2024/12/20 Fri.

 今日の最低気温は1℃、まだ氷点下ではないけれどとても寒い。
 就労移行支援。情報処理技能検定の3級と、日本語ワープロ検定初段の過去問。
 昨日一昨日とさぼった大掃除の続きに着手。とはいえ、狭いワンルームの中で掃除する箇所は多くはなく、最後に残していた台所だけ簡単に掃除をして終了。帰省中に着る衣類を詰めたゆうパックの大きな箱を集荷に出した。

2024/12/21 Sat.

 久し振りに6時台に起きた。荷造りを仕上げて、冷蔵庫以外のコンセントを抜いたりブレーカーを落としたり。帰省中に心配になる可能性があるので、コンセントやブレーカー、きちんと閉めた玄関ドア等の写真を撮っておいた。マンションに戻らずそのまま帰省できるように、最寄りの地下鉄の駅のコインロッカーにキャリーケースを入れておく。
 午前中は就労移行支援に行く。情報処理技能検定の準2級はさすがに分からない箇所が多くなる。テキストを見て、AND関数とOR関数、絶対参照を覚えた(多分)。
 就労移行支援が終わって、コインロッカーからキャリーを取り出して地下鉄に乗り、西鉄天神高速バスターミナルからバスに乗った。高速バス乗り場に来ると、これから楽しい長期休みが始まるんだという大学時代のわくわく感を思い出す。もう10年は前のことなのに。天神バスターミナルから博多バスターミナルまでの道程が、「帰省の時に時々通る道」から「普段歩いてよく通る近所」に変わったのがなんだかおもしろかった。
 高速バスの中で文字を読むと酔うので、本やスマホを見なくても楽しく過ごせるようにとワイヤレスイヤホンを持ってきた。ところが、ただでさえ眼鏡を掛けているのに、マスクの紐と耳掛け式のイヤホンもとなると、さすがに全ては耳に掛けきれない。イヤホンには今にも落ちそうな不安定なぶら下がり方をさせてしまったけど、music for reading by fuzkueのプレイリストを聴きながらバスに揺られていると、気分が良かった。
 父がバス乗降場に迎えに来てくれて、家に帰ってきた。とらふくが戸惑いながらも出迎えてくれて嬉しい。両親と喋ったり、荷解きしておみやげを並べたりしながら、ぱしゃぱしゃとせわしなく猫達の写真を撮る。もちろん、もふもふの冬毛をたくさん撫でた。一ヶ月振りに会う私のことをしっかり覚えてくれていて、足元にまとわりついてすり寄ってきてくれて、本当に嬉しい。
 今日着てきたとらちスウェット(とらちの写真をプリントしたスウェット)は、家族に大好評だった。

2024/12/22 Sun.

 夜中、ごく弱い風が顔に当たる感触で目が覚めると、目の前にふくちの顔があった。風の正体はふくちの鼻息だった。撫でてやるとごろごろ言い、私の周りをうろうろした後、私の足に寄り添って寝た。
 父は吹奏楽、母は弦楽アンサンブルの本番に出かけたので、私は留守番して、洗濯をしたり掃除機をかけたり、あちこち片付けたり。こたつを出すと、猫達が喜んでくれた。
 庭がすっかり冬景色になっている。真っ赤に紅葉したもみじは風が吹く度に葉を落としていくし、鮮やかな濃いピンク色のさざんかがいくつも花を咲かせている。ヒヨドリなどの野鳥がさえずる声も聞こえる。
 今日も猫の写真をいっぱい撮った。カメラロールがみるみる猫だらけになっていく。

週間日記(2024/12/09-12/15)

2024/12/09 Mon.

 10時間寝た。30分ほど歩いて博多駅近くのヨドバシカメラまで行き温湿度計を買い、また30分歩いて帰ってきた。部屋に温湿度計を置いて、室温が下がり過ぎたら暖房を入れるルールにしておけば、むやみに寒さを我慢してメンタルに悪影響を及ぼすことも減るかもしれないという算段。ついでに寄ったロピアで買ってきたヤンニョムチキンとキンパでお昼ごはん。すごくおいしい。
 晩ごはんに、どう見ても一人暮らしの量じゃないかぼちゃシチューができた。豚肉と大根の味噌煮も作ったけど、これは冷凍して作り置きおかずとする。
 昨夜「幸せ」を実感してから、気が付いた。以前、手を繋いで歩くカップルに憧れを覚えたことがあったけど、あれはもしかしたら幸せそうに見えるから羨ましかっただけなんじゃないか。よく考えれば、人と接することにものすごくエネルギーを要する自分が誰かと手を繋いで幸せを感じられるかというと、ちょっと想像がつかない。でも、私は私一人で幸せだと思える時間を過ごすことはできる。幸せの種類や形は違えど。幸せそうに見える他人の幸せが、私にとっても幸せとは限らない。だったら、他人の幸せを模倣しようと追う必要はないんじゃないか。
 10月末にインストールしたマッチングアプリをやめてもいいかもしれないと思った。性別問わず友達作り、あわよくばパートナーもと思って始めたTinderでは、奇跡的にごくごく少数の人とメッセージのやりとりを続けることができていた(実際に会ったことはない)。私のような人間と話してくれるのは嬉しいし、とてもありがたい。ただ、私の「人と関わること全般にものすごくエネルギーを使い疲弊する」という症状なのか特性なのか、もう何年も続くその問題によってどうしても勝手にしんどくなってしまう。場数を踏んで慣れていけばもしかしたらという期待もあったけど、今のところそうした兆しは全く見えない。そこへ、「特定の相手と親しい関係を築かなくても、どうやら私には私なりの幸せがあり、それは私一人で十分完結できるものらしい」という気付きが生まれてしまったら、もうアプリはいいかなという気になってしまう。多分、何ヶ月か経てばまた人と関わってみたい欲求が再燃してアプリを入れるんだろうけど、とりあえず今のところはお腹いっぱいだ。

2024/12/10 Tue.

 9時間以上の睡眠が続いている。十分に休息を取れた満足感があって良い。
 日記ZINEの原稿作り。サイズはA6かB6か、縦書きか横書きか、フォントはどうするか、と色々考えてWordをいじるのは楽しい。当初は9~11月の日記を一冊にまとめようと思っていたけど、もう少し分厚くても大丈夫そうなので、12月の分も加えることにした。ボールペンでちまちまと挿絵も描いた。文章も絵も上手くはないし、複数部刷ったところでそれがどこかで売れるとも思えないけど、何より自分が楽しいので良い。単なる趣味だし。

2024/12/11 Wed.

 就労移行支援。スタッフさんと一対一で面談があって、今後の長期目標や短期目標を考えた。数年前に地元で就労移行支援を利用した時は、いつまでに就職したいか訊かれただけで死にたくなっていたけど、今回は特にそう感じなかった。あの時は就労移行支援どころじゃなかったのかもしれない。色々尋ねられ、「親から経済的・精神的に自立したい」「不安は火災報知器のようなもので、自分の場合は少しの煙にも反応して鳴るが、不安それ自体は悪いものではない(どこかで聞いた表現)」「どういう仕事に就きたいかはまだ決めておらず、就労移行支援に通いながら考えたい」「人といるといっぱいいっぱいになるが、それはもう仕方がないものとして、後から自分でどうリカバーするか」といったような内容のことを答えた。
 ZINEの原稿をいじった後、とらふくLINEスタンプ作りの続きに取り掛かった。YouTubeの動画をBGMにひたすら作業していたら、いつの間にか夜の10時になっていた。時間を忘れてこんなに集中できたのは久し振りだ。ずっと机に向かっていたので肩も腰もばきばきで、目もすごく疲れたけど、創作活動に夢中になれたことがとても嬉しい。とはいえ今日はもう疲労が限界なので、シャワーと歯磨きだけ済ませて、晩ごはんも食べずに寝た。

2024/12/12 Thu.

 泥のようにぐっすり眠った。昨夜せずに寝た洗濯や洗い物をやっつけて、ごく簡単に部屋の掃除をした。今日の午後はマンションの消防設備保守点検があるらしい。ポストに入っていたお知らせには、「ベランダに避難器具が設置されているお部屋は、点検者が入室して器具の点検を行います」とも書いてあった。残念ながら、私の部屋のベランダには「避難はしご」と書かれたそれらしい物がある。どうせベランダには出ることはないからと、窓を塞ぐようにしてメタルラックを置いて観葉植物の鉢を並べていたので、それらの障害物を脇に移動させた。自分の部屋に他人が入ってくるのは非常に気乗りしないけども、仕方ない。
 とらふくスタンプがとりあえず仕上がったので、LINE Creators Marketに審査のリクエストをした。絵が下手すぎるからもっと上手くなりたいという気持ちと、楽しく描けたのだからそれが何よりだという気持ちとがせめぎ合っている。

2024/12/13 Fri.

 9時間たっぷり寝たのでいつも通りすっきり目が覚めるはずが、今朝はどうにも眠い。あまりの眠さに、これは行ってもまともな活動にならないかもしれないと考え、思いきって今日の就労移行支援を休むことにした。働き出したら眠気で欠勤する訳にはいかないので、いつかは無理をしないといけない時が来るはずだけど、少なくとも今はまだその時じゃない。休む旨をメールで送って、さらに3時間眠った。結局、合計12時間寝て、ようやく気が済んだ。
 LINEスタンプの審査が通り、販売を開始できた。さっそく自分用に購入して、家族のLINEグループに送った。自分で使いたいスタンプを作って、実際に使えるのは楽しい。何より、素材が良い。とらふくはかわいいので。
 夜は、桜坂の森本能舞台に「ネイティブ・アメリカンの儀礼歌による「夜の歌」」を観に行った。小学生の頃にネイティブ・アメリカンの文化に興味を抱き、それから20年ほど経ってペヨーテに好奇心を掻き立てられるようになり、という具合に関心を持ち続けているので、ネイティブ・アメリカンの歌を実際に聴く機会だからとチケットを購入していたのだった。前半は、お経をこんなに集中して聴く機会ってなかなかないなと思った。後半は、お経や舞、笙、琴、ガムランという独特の組み合わせの演目で、これもおもしろかった。感想を言葉にするのが苦手なため「何かよく分からないけど、すごかった」という言い方しかできないのがとてももどかしい。なんとなく、シャーマンによる神聖な儀式にでも参加しているかのような気分で能舞台を観ていた。不思議な体験だった。
 21時頃に能楽堂を出て、地下鉄に乗って戻ってきた。小腹が空いたので何か食べたいけど、マンションに帰り着いてからすぐ食べたら、その後お風呂に入るのがとてつもなく億劫になるに決まっている。そこで、駅から途中にあるコンビニで肉まんを買い、食べながら歩いて帰ることにした。人通りは相変わらず(地元に比べて)多いけど、暗いからあまり気にならない。寒い屋外で食べる肉まんってなんでこんなにおいしいんだろう。おかげで、帰宅してすぐに手洗いうがいとシャワーを済ませることができた。明日こそ就労移行支援に行く。

2024/12/14 Sat.

 今日は就労移行支援に行った。就業規則の重要性等について学ぶプログラムを受講。遅刻や欠勤を極力しない安定した勤怠というものがいかに大事かという内容があったけど、その「安定した勤怠」ができないのも症状のうちといったような人達が支援対象になっているだろうに、それがどれだけ重要かと説かれても、なんだかなと思う。困っている個人に対して、できないことをできるようになるよう強いるよりも、困っている個人があまり困らないで済むように周囲の環境を整えるのも支援の在り方なのではないかなと思ってしまう(それもしているのかもしれないけど)。どんな要素であれマイノリティというのは一定数いるのだから、マイノリティがマジョリティに馴染むよう努力させられるより、マジョリティの方こそ器を大きくするべきなんじゃないだろうか。もちろん、すぐすぐには変化しない世の中で生きていくためにはマジョリティに近付こうとする必要があるのだろうけど、当事者にだけ変化を促すことだけが支援だとは思いたくない。
 いつの間にか、街中の花壇の花が植え替えられている。10月に福岡へ来たばかりの頃は、マリーゴールドやニチニチソウなどが植わっていたけど、今はパンジー、ビオラ、アリッサム、プリムラ、金魚草、ノースポールといった冬の花になっている。
 天神に行く途中の道に、マンションだか住宅だかの営業で勧誘している人達が立っている。最初に声を掛けられた時は「チラシを渡すことが目的なので、ちょっと建物内に入ってチラシを受け取ってくれるだけでいい」と言われ、ここでついて行ったら何かが終わるに違いないと確信し「すみません、すみません」と言いながら苦し紛れに通り過ぎた。次にまた同じ人から話しかけられ、「すみません」「ごめんなさい」「お疲れさまです」と弁解しながら逃げた。今日は別の人に捕まり、「すみません、この間お断りしたので、すみません」と平謝りでもしているかのようにぺこぺこ頭を下げながら通り過ぎた。その人が背後から「お優しいですね」と言うのが聞こえた。チラシを受け取ってもらうだけだからと通行人を連れ込ませるやり方はどうせこの会社のお偉いさんが決めたのだろうけど、逆らえない立場にある従業員の人達に、この寒い中に立たせて無謀な営業をさせるなんてとんでもないと思う。物件なんて購入しようと思っている人しか買わないのに、チラシをもらって「じゃあ買おうかな」なんてなるはずがない(多分)。今後はこの建物の前を避けて反対側の歩道を通るようにしたいけど、もしうっかり忘れて通ってしまったら「風邪引かないでくださいね」とか「寒いのに大変ですね」とか言いたい。でも、その心配する声かけから勧誘に繋がってしまったらどうしよう。

2024/12/15 Sun.

 今日から5日間かけて、ちょっとずつ部屋の大掃除をすることにした。洗濯槽クリーナーを使って洗濯機を掃除したり、ベッド下のたんすの奥にフローリングワイパーをかけたり、クローゼットや洋服だんすの整理をしたり、手当たり次第に物を突っ込んでいた棚の中身をきちんと整頓したり。どうかこのやる気が5日間続きますように。
 午後は、人に渡す誕生日カードとクリスマスカードを描いた。相手に喜んでもらいたくて絵を描くのは、私にとってはかなりの愛情表現なんじゃないだろうか。(愛が)重たい紙きれ。それにしても、部屋の照明のLEDライトを買い替えて本当に良かった。当初は暖色の電球にして、暖かな色味に満足していたものの、ただ暗かった。メイクする際に不便だったけど、まあいいかと妥協していた。ところが、先日絵を描いた時に色鉛筆の色が見えにくいことに気付き、暖色にも蛍光灯系の白色にも色味を変更できる電球に慌てて買い替えた。おかげで、紙に塗った色鉛筆の色が前より見えやすくなった。電球を買い替えた理由がメイクのしにくさではなく絵の描きにくさだという自分のことは、嫌いじゃない。そのうちデスクライトを導入するともっと良いかもしれない。

週間日記(2024/12/02-12/08)

2024/12/02 Mon.

 ぐっすり9時間寝た。朝ごはんに野菜をたっぷり入れたスープを作り、3日分の野菜不足の埋め合わせをして、室内干しの限界に挑むような量の洗濯物を干し、荷解きもほとんど終わらせた。
 相談支援事業所のスタッフさんが来て、支援計画を立てたのでサインをするようにとのこと。
 寒い部屋でお茶を飲むと、本当においしい。冬中ぽかぽかに暖かい実家では、このありがたさに気付けなかった。マンションの部屋は寒くて床も冷たいけど、念願の一人暮らしが叶ったからこそのものだと思うと嬉しい。自分一人でマンションの一室に住んで、自分一人のためだけに家事やら買い物やらをして生活しているというだけでこんなに嬉しいのに、これで自分一人を養えるだけの収入を稼げるようになってしまったら一体どうなるんだろう。そんな嬉しいことがあっていいのか。でも、これが嬉しいことだというのは社会からそう思わされてるからだと思う。経済的に「自立」していることが当たり前で、社会の全員がそれを目指すべきだと刷り込まれているから嬉しく感じるだけで、本来は収入の有無や額なんか一切関係なく、誰だって健やかで楽しい生活を送る権利があるのに。仕事をしている人を指して「社会人」と表現することに一生反発していきたい。
 旅行が楽しかったよという話題を祖母への手紙に書いた。イラストや写真、おみやげのポストカードなどを入れたら、ちょっと分厚い封筒になってしまった。喜んでもらえるといいなあ。祖母とも両親とも、一緒に暮らさず物理的に距離を置いてみると、衝突する機会がないから大好きなままでいられて嬉しい。実家だと、部屋と部屋を隔てる壁がなく、自室があるのにないみたいな状態だったから、ようやくプライバシーを保てる自分の部屋を持てた気分。
 美術館で買ってきた額絵を壁に貼った。何もない壁に大きい絵を飾りたかったから、良いのがあって良かった。ゴッホのバラと、福田平八郎の「芥子花」。枕元に芥子があるのがポイント。

2024/12/03 Tue.

 紛失したnimocaの再発行をしにソラリアステージへ行き、2日後以降に新しいnimocaを受け取れることになった。ひと安心。とらちスウェットに縫い付けるためのリボンを手芸屋さんで買って、ドラッグストアとスーパーに寄って帰宅。
 旅行の日記を書いた。楽しかったことや考えたことを忘れたくなくて、あるいは忘れても読めば思い出せるようにしておきたくて逐一書いたら、3日間の日記は8,000字を超えた。頭の中がすっきり整頓されたような気がして満足。

2024/12/04 Wed.

 就労移行支援。ヘルスケアについてのプログラムを受講。
 大きなブロッコリーを買ったので、大量のミモザサラダを作った。りんご抜きのミモザサラダをお腹いっぱい食べたいという小中学生の頃の夢を叶えられる大人になれた(給食のミモザサラダにはりんごが入っていた)。ごはんを炊いてラップに包んで冷凍し、朝ごはんに食べるトマトスープも作った。
 夜、キーウ・クラシック・バレエの「くるみ割り人形」を観に行った。混んでいるバスに乗りたくなかったし、nimocaも紛失してるから小銭の用意も面倒だしで、片道40分の道程を歩いて往復した。頭の中でずっとくるみ割りの曲を流しながら、イルミネーションできらきらした街路樹を眺めて歩くのは、なかなか楽しかった。暗くなってからの外出というものを普段しないから、特別感もある。なぜかチョコレートの踊りだけ冒頭が全然思い出せなくて、5分10分歩いた所でようやく思い出せてすごくすっきりした。せっかくバレエを観に行くのだからと、ロマンティックチュチュのようにふんわりした白いチュールのロングスカートと、タイツ生地の白いハイソックスと、バレエシューズに似たピンクのメリージェーンを身に着けた。後は、普通に黒いカーディガンとか、黒いコートとか。ちょっといかにもすぎるかなと思ったけど、隣の座席の人も似たような白いチュールのスカートを着ていたので、こういうことを考えたのは私だけじゃないのかもしれない。
 初めて観るプロのバレエは素晴らしくて、夢のように美しくて、比較するのも変だけどディズニーランドよりもずっとわくわくすると思った(私はディズニーがあまり好きじゃないし、ディズニーランドに行ったこともないけど、なんとなく大多数の人が楽しいと感じるものの代名詞のひとつだと思っている)。自分もクララのように素敵な夢の中にいるような気分でずっと観ていた。ステージにいる全ての人が美しくて、その誰もを見ていたいので、目が8個くらい欲しかった。人生で初めて人間を美しいと思ったのは、3,4歳頃のバレエの発表会で見た研究科のお姉さん達のコーヒーの踊りだった。それから30年近く経って、初めて客席からプロのコーヒーの踊りを見たけれど、やっぱり美しかった。もちろん衣装も振り付けも違うけど、本当にきれいだった。冒頭のクリスマスパーティーの場面では、舞台の脇で喧嘩の動きをしている子どもたちがいてかわいかった。雪の精の踊りは見たことがない動きだったけど、ちゃんと雪だと分かるし、雪の結晶の形を思わせるような動きがあって感嘆した。我が家のふくちがよくやる、両手を手首の辺りでクロスさせた「瀕死の白鳥」ポーズも出てきた。ロシアのトレパックではなくウクライナの民族舞踊の場面があって、軽やかで力強い曲と動きがとても素晴らしかった。花のワルツは鮮やかなピンクのロマンティックチュチュがひらひらなびいて、美しさにうっとりした。今まで聴いたハープの音色の中で一番きれいだと思った。金平糖の女王のチュチュには、銀色のきらきらした飾りがたくさんついていて、動く度に照明が当たってちらちらと瞬いて本当に美しかった。明日は両腕が筋肉痛になるだろうなと思うくらい、力いっぱい拍手した。観終わってからも楽しい気分が続いていて、スキップかツーステップで帰りたいくらいだった。

2024/12/05 Thu.

 区役所に行って、就労移行支援の利用が適切かどうかの判断をする窓口調査を受ける。担当してくれた職員さんは優しかったけど、見ず知らずの人に自分の病歴や悩み事をべらべら話すという状況がこの所ちょこちょこあったからか、なんだかぐったり疲れてしまった。夕べ寝不足気味だったのもあってか、気分が沈んだ。ソラリアステージに寄って、再発行したnimocaを受け取る。帰りに寄ったスーパーで見事な大根が一本200円で売られているのを見つけて、少しだけ持ち直した。

2024/12/06 Fri.

 就労移行支援。日本語ワープロ検定の過去問。
 昨日買ってきた大根を、鶏肉と干し椎茸と一緒に煮た。味がよくしみたすごくおいしい煮物ができた。こんなにおいしい煮物を作ることができる私という人間のことを、私はもっと大事にしていいはずだと思えた。

2024/12/07 Sat.

 就労移行支援。動画プログラムを視聴。ひたすら眠かった。
 この後オーケストラの演奏会を聴きに行くので、マンションには帰らずそのままホールへ向かうことにした。開演までは時間があるから何か本を読んで時間を潰そう、でも本を持ってくるのを忘れてしまった、これを口実に何か欲しい本を一冊だけ買っちゃおう、と魔が差してジュンク堂へ行くも、今まさに読みたいと思える本がなかなか見つからない。読んでみたい本は無限にあるのに、昔に比べてすっかり本を読めなくなってしまった自分には、とっつきやすさが本選びの最重要事項になってしまう。悲しい。1階から3階までを散々うろうろして、ようやくハン・ガンの『菜食主義者』をレジに持っていった頃には、ゆっくり読書できるような時間は残っていなかった。ドトール(一人での外食がなかなかできない自分にとって一番入りやすい店)でミラノサンドと温かい紅茶を頼み、結構ガーリックが効いている新メニューをもさもさと食べて、演奏会の会場に向かった。途中、クリスマスマーケットをやっているらしい公園を通ったので、それぞれの出店がどんなものを売っているのかちらっと眺めてみた。ほとんど食べ物屋さんだった。演奏会の曲目は、死の舞踏とカレリアとカリンニコフの交響曲第1番。死の舞踏は以前にも演奏会で聴いたことがあるし、カレリアはシベリウス好きの父親がいる家庭で育った人間にとっては子守唄といえるほど慣れ親しんだ曲だけど、カリンニコフはほとんど聴いたことがない。クラシックの演奏会に行って、知らない交響曲を聴いているという状況が新鮮だった。アンコールは、チャイコの眠れる森の美女。自分では作曲家と曲名が思い出せなかったけど、曲自体はすごく聞いたことがあるものだった。オーケストラの演奏会に対して色々ひねくれた気持ちやこじらせた思い出はあるけれど、やっぱりいいなあ。そう思って、パンフレットにチラシが挟まっていた九州交響楽団の定演のチケットを勢いで購入した。せっかく福岡に来たのだから、芸術に触れられる機会を逃すのはもったいない。
 アクロス福岡にあるおしゃれな文房具屋さんを覗いて、松尾ミユキさんのカレンダーをすごく欲しいと思ったけどなんとか我慢して、イオンショッパーズの無印と百均で買い物をした。あくまで必要な物だけを買ったつもりではあるけど、お金を使いすぎている気がする。旅行にも行ったのだから当分は倹約しなければと思うのに、理性で物欲を抑えることがとても難しい。素敵な物、欲しい物が世の中には多すぎる。幼稚園の頃に母が書いてくれていた私の連絡帳には、美しい物への憧れや、素敵だと思う物に対するこだわりのようなものが強いといったような旨のことが書かれていた。美学や美意識のようなものがあると言えば、聞こえは良い(だから、美しくない自分の容姿を許せないんだと思う)。三つ子の魂百まで、三十路の今でもやっぱり魅力的な物への執着は捨てられない。好きなイラストレーターさんのカレンダーを飾りたいし、きらきらしたクリスマス雑貨を部屋に並べたいし、どうせ買うなら手頃な値段だけど気に食わないデザインの物より、これぞと思えるかわいい物を選びたい。素敵な物に対する憧れは多分そのまま持っていても構わないもののはずだから、その欲望を上手くあしらえるだけの収入さえ稼げるようになれればバランスが取れる気がする。それができないからずっと悩んでいる訳だけども。
 帰宅して、昨日の残りの煮物と、賞味期限が過ぎたレトルトの煮物(これも大根と鶏肉の煮物)と、ごはんを温めて食べた。同じ大根と鶏肉の煮物だけど、私が作ったやつの方がはるかにおいしく、私の舌に合っていた。晩ごはんを食べ終えたのになんだかジャンクな物が食べたくて、カップ焼きそばを作って食べた。後悔するのは分かっているのになんで食べてしまうんだろう。物欲を抑えられないのと同じかな。
 食器洗いや洗濯、お風呂を済ませて、せめて夜くらいは煩悩から解放された穏やかな時間を過ごそうと思って、ミルクティーとクッキーをお伴にIKEAのリラックスチェアでZINEを読んだ。他人の日記本っておもしろいなあ。途中に甘酢いかを摘まんでしまった以外は、良い感じの時間を過ごせた。いかもおいしかったけど。白湯を飲んで、ホットミルクも飲んで、この日記を書いて今日はおしまい。

2024/12/08 Sun.

 潰した段ボール箱を束ねて、寒さと面倒くささにしばらく渋ってからリサイクルステーションへ捨てに行った。土日の昼間だけ回収しているので、今日を逃したらまた一週間、狭い部屋の隅に段ボールが陣取ることになる。マンションのエントランスに降りると、いつの間にか大きめのクリスマスツリーが飾ってあった。緑ではなく白い葉に、ピンク系のオーナメントが吊るされていてとてもかわいらしい。共用スペースにこんな素敵なものを用意してくれた人に一言お礼を伝えたい。
 おやつに、山種美術館の近くで買ったパイナップルケーキとココナッツケーキを食べた。お店の方と少しおしゃべりをして、試食もさせてもらって買ったお菓子で、本当に良い旅行ができたなと思い出しながら頂いた。
 夜は、文学フリマ東京で買ってきたZINEを読んだ。一人暮らしの部屋でもこもこの膝掛けにくるまりながら、リラックスチェアに座ってZINEを読む時間があまりにも幸せで、幸せだと思えたこと自体も嬉しかった。仕事もこの先もどうなるか分からなくて不安はあるけど、まあなるようにしかならないし、やりたいことをやっていくしかないなと思えてくる。10年前などは30代以降の人生なんてないものだと思い込んでたのに、30代の今はこの先も人生があるものだと思って、それについて悩んだり不安がったりしている。なんだか悩みの質が変わったというか、贅沢な悩みになったというのか。生きるのをやめるという選択肢を今は持っていない、選びそうにないという状態がとてつもなく幸せだ。

週間日記(2024/11/25-12/01)

2024/11/25 Mon.
 実家の猫用カメラをアプリで見たら、あざらしのようにまるまるしたとらちが籐椅子の上でごろんと寝ていた。来月末に帰省する頃には、冬毛でもふもふとしているんだろうか。
 ヨドバシカメラまで歩いて行って、ワイヤレスイヤホンを買った。同じ建物の中にあるロピアも覗いてみようかと思ったけど、夕方のスーパーのあまりの人の多さに引き返して、DAISOだけ見て帰った。いつかはロピアのお惣菜を買ってみたい。
 さっそくイヤホンを使ってみたら、これがすごく良かった! 周りの部屋に配慮して音量を絞らなくていいし、料理をしていても音楽や動画の音声がはっきり聞こえる。最近見始めたオモコロチャンネルの食べ物系の動画をBGMに、ホワイトソースを作ってマカロニをゆで、昨日作ったミートソースと一緒にグラタンにした。ホワイトソースはダマだらけだし、ミックスチーズの代わりに買った安いヘルシーシュレッドは味がチーズに劣るけど、器いっぱいのグラタンは我ながらおいしかった。

2024/11/26 Tue.
 相談支援事業所の相談支援員の人が訪問調査に来た。見知らぬ人間が淹れたお茶は飲むのに勇気が要るだろうと思って、直前に近くのコンビニでペットボトルの温かいお茶を買い、保温バッグにカイロと一緒に入れておいたものを出して渡した。そうしてお茶を出すことで却って向こうに気を遣わせてしまうかなとも思ったけど、とりあえず持ち帰ってもらえた(置いて帰るのもそれはそれで勇気が要ると思う)。先日の就労移行支援での面談と同じような内容の聞き取り。何か困っていることはありますかと訊かれても、その状態がそもそもデフォルトだから、第三者から「それは困っていると言っていいよ!」とでも言われないと、自分が困っているのかどうか分からないなと思った。支援者側の人はよく「これはこういうことですか?」と私の悩みの理由をその人なりに解釈して理解してくれようとするけど、初めて会った人がすぐに納得できるような簡単な原因なら私も苦労しないんだよなとも思う。色々正直には答えたけど、もしこれで「福祉サービス(就労移行支援)の利用は適切ではない」と役所に判断されて、就労移行支援を利用できないというようなことはあるんだろうか。訊き忘れた。
 本当に、仕事さえしなければ、割と健康で快適な生活を営める。でも仕事をしないと年金だけじゃこの先も生きてはいけないし、それでも働けないから、だったら死のうかなと思うようになってしまう。働いたところで週5日フルタイムの労働を自分が続けられるかは分からないし、それだけ働いても得られる収入はかろうじて暮らしていける程度にしかならないと思うけど、賃金が低くて税金が高いのは政治の失敗だから、自分が経済的な自立できる可能性を政治に潰されたくない。

2024/11/27 Wed.
 就労移行支援。部署活動というものがあって、その見学をした。
 昨夜寝る前に思いついてどうしてもやりたかったことがあって、帰ってお昼を食べてからそれに着手した。PixivFACTORYで、とらちの写真をプリントしたスウェットを自分用に作る作業。カメラロールの膨大な猫写真の中からとびきりかわいいとらちの写真を一枚選んで、背景を透明化して、縁取りをして、PixivFACTORYにアップロードして位置を調整して完成。スウェットの色は、とらちの毛色が一番映えると思ったネイビーにしてみた。来月の後半に発送予定とあったので、それまでに手芸屋さんでとらちの首輪に似た赤いリボンを選んで、届いたらスウェットに縫い付けようと思う。ひとつ問題があって、服にリボンが垂れ下がっていると、帰省した時に真っ先にふくちの餌食になりそうな気がする。でも、リボンは付けたいしなあ。
 旅行に備えて歩いておきたかったけど、雨が降っていたので午後は大人しく部屋にこもっていた。外は寒々としているものの、温かい飲み物と膝掛けを相棒に自分の住みかでのんびりできて快適だった。一人暮らしを始めてもうすぐ2ヶ月、私の部屋が私にとって住みやすく居心地の良い場所になっていて嬉しい。引っ越してきた当初は「ここに住むのか…」といくらか戸惑ってすらいたけど、巣を作る動物のようにせっせと部屋を整えてきたかいがあった。

2024/11/28 Thu.
 朝、ちょうど出かけた時にひょうだかあられだかが降ってきた。就労移行支援に行き、ワープロ検定の過去問に取り組んだ。
 明日から2泊3日の東京一人旅! すごくわくわくしている。荷造りはばっちり、旅行の計画も多分大丈夫、心身の健康状態もなかなか良さそう。乗り換えはうまくいくだろうか。

2024/11/29 Fri.
 東京旅行! 朝4時に起きて、まだ日が昇らぬ内に出かけた。地下鉄を乗り継いで福岡空港に行く。空港は普段馴染みがない場所なので、「今から遠出するぞ」という非日常感があってうきうきする。早めに着いたのもあって、余裕をもって手続きを済ませて搭乗することができた。いつ離陸するかどきどきする瞬間はいつ体験しても楽しい。雲の上はとても天気が良い。飛行機の窓からこうして一面の青空を見ると、なんだか天国みたいだなと思う。機内バウチャーで飲み物と食べ物を頼めたので、ホットコーヒーとチョコレートマフィンをお願いした。地上から遠く離れた場所で、青空と雲だけの景色を眺めて飲むコーヒーがすごくおいしかった。空を飛びながら飲むコーヒー。着陸に向けて降下するにつれて、例のごとく耳が痛くなってきた。春の大阪旅行で耳抜きを習得したからと余裕ぶっていたものの、今回は耳抜きがうまくできず、両耳が痛いまま成田空港に降り立った。フライト中に、『家父長制はいらない』を読み終えた。
 成田空港の長い通路の壁一面に色々なポケモンがたくさん描かれていて、歩いていて楽しかった。こういうイラストがあると、かなり長いこの通路もうんざりせずに歩けていいなあ。成田空港から京成スカイアクセス線とJR武蔵野線、つくばエクスプレスを乗り継いで、茨城県つくば市へ移動。車窓から赤く色付いたもみじが見えて、そういえば今年の秋は紅葉らしい紅葉を見ていなかったと思い驚いた。樹木なんて腐るほどある地元と比べれば、福岡市内(の、私が住む辺り)は自然がうんと少ない。もみじもハゼもドウダンツツジも目にしない秋を過ごす所だったのか。
 つくば駅のコインロッカーにキャリーケースを預け、つくば市中央公園の中を歩く。良い天気で、野鳥の声を聞きながら落ち葉を踏み締めて歩くのが気持ち良かった。さざんかの花にメジロが飛んできている。街灯に「ロボット実験区間」と書かれた看板があって、学術研究都市らしさを感じた。
 SNSで見ていていつか行ってみたいと思っていた「本と喫茶 サッフォー」へ。読んでみたい本がありすぎて、選ぶのが大変で楽しかった。前から気になっていた『ゲリラガーデニング』と、ZINE2冊を購入。喫茶スペースで頂いたヴィーガンキーマカレーとコーヒーがとてもおいしかった。店内にはフェミニズムや反差別、反戦といったテーマが当たり前のものとして掲げられていて、そういう場所がすごく安心できることをここに来て知った。障害者福祉についての本も、支援してあげようという支援者目線のものではなく、より当事者に寄り添った当事者目線に近い雰囲気のものが並んでいて、一人の手帳持ちとしても嬉しい。セーファースペースというのはこんなに居心地が良いんだ…!
 サッフォーから少し歩いて、国立科学博物館 筑波実験植物園に行く。「いつか行けたらいいな」と思っていた場所へ立て続けに行けるなんて、こんな愉快なことはない。「温帯資源植物」の区画には、「イチゴの多様性」や「食の植物【ベリーの仲間】」と看板が立てられた場所があり、様々なイチゴやベリー類が植わっていて、ベリー好きには天国のような空間だった。地元の野山で見ていたフユイチゴや実家で育てていたブラックベリーも、こんなにもりもりと茂ったのは見たことがない。図鑑でしか見たことのなかったクマイチゴやモミジイチゴもある。いちご天国の隣には色々な野菜を植えた畑があり、キク科の野菜だけを集めたブースや、ネギ、ホウレンソウ、ダイコンなどが植わっている。本当にたくさんの種類の野菜が育っていて、いちご天国と併せてまさに理想の畑だった。それぞれの樹木の札を見ながら、雑木林のような道を歩くのも楽しい。地元の野山のようで落ち着く。ここももみじが真っ赤できれいだった。果樹のコーナーに立てられた「毒毛虫に注意」という写真付きのおぞましい看板に慄く。枝から枝へ飛び移るシジュウカラがかわいい。我が家の庭に生えていたら根絶やしにされる植物達(ヨモギ、オオバコ、ハッカ、ヘクソカズラ)にも、和名と学名と分類が書かれた札が立てられている。支柱まで添えられて、こんなに厚遇されているヘクソカズラなんて見たことがない。絶滅危惧植物温室には、名前も姿も知らなかった植物が管理されていた。熱帯植物の温室には、入るなり大きなエアプランツの株がたくさんぶら下がっていて、百均で売られているような小さなものとは比べ物にならないほど迫力があった。エアプランツってこんなに生命力に溢れていたのか。私が育てている百均のものと違って。蔓を伸ばしに伸ばしたバニラの鉢もいくつもある。バナナの木には花が咲いていたり、実が生っていたり。ゴレンシやドリアンといったトロピカルフルーツもある。スパティフィラムもストレリチアも、園芸店で見るそれと同じ植物とは思えないほど生長している。ここでもタビビトノキはガラス張りの天井に届きそうだった。今年はそれぞれ別々の場所で3回もタビビトノキを見ている。こんな贅沢良いんだろうか。園内を散々歩き回って植物を堪能して、鮮やかな黄色の銀杏を眺めながら天久保公園近くでバスを待った。時刻表より遅れてやってきた筑波大学の循環バスはぎちぎちの満員で、これは歩いてつくば駅へ向かった方が良かっただろうかと後悔するほどだった(でも途中で降りることもできそうにない混み具合)。すぐ隣にいる若いカップルは、学会がどうのこうのという会話をしていて、なんだかやたら偏差値の高そうな車内だなと思った。私が下げているけど。
 再びつくばエクスプレスに乗り、秋葉原でJR山手線に乗り換え。たまたま席に座れて、山手線で居眠りするという初めての体験をした。まるで都会の人みたいと思う所が、私が都会の人ではない証左になっている。東京駅のグランスタに行き、ネットで予約していた駅弁を受け取った。東京に来て、宮城県の駅弁を食べる。伯養軒の炙りえんがわずしというものをえんがわ好きとして一度は食べてみたかったのだけど、九州からでは宮城県はあまりに遠い。ところが、たまたま東京駅で販売していることを知り、こんなチャンスはないと喜んで飛びついた。ありがたい。
 また山手線に乗り、今度は寝ずにビジネスホテルの最寄り駅で降りた。御徒町駅の周辺には、宝石や貴金属を扱うお店がやたら多くて、なぜなんだろうと思い気になった。ホテルの部屋で食べた炙りえんがわずしは、これまで食べたえんがわの中でダントツにおいしかった。おいしいものだとは思っていたけど、えんがわってこんなにおいしいんだ。お弁当を広げている机の前の壁には大きな鏡があって、そこに移った自分の顔がものすごく幸せそうな顔をしていて、自分でも笑ってしまった。私は写真に写るのが苦手で、うまく口角を上げて笑顔を作ることができないんだけど、このえんがわずしを食べながらなら満面の笑みの写真が撮れるかもしれない。
 今日の歩数は16,974歩。

2024/11/30 Sat.
 ホテルでぐっすり寝て、朝ごはんを食べ、駅のホームで電車を待つ。目の前で電車が行ってしまったので、次の電車は何分後かと表示を見てみると、なんと3分後とある。すごいな、山手線! 福岡に来て、地下鉄が10分おきに出ていると知っただけで慄いた人間としては、ただただ都会の公共交通機関の充実ぶりに戦慄するしかない。地元なんて、電車も通っていないのに。上野駅のコインロッカーに自分のキャリーケースを押し込んでいたら、近くにいた老夫婦がコインロッカーの使い方が分からないという風にしていたので、お節介かなと思いながら声を掛けてみた。内心緊張していたけど、精いっぱい分かりやすく使い方を教えたつもり。帽子を取って丁寧にお辞儀をしてくれて恐縮した。でも、喜んでもらえて嬉しい。
 上野公園はどこも人が多くて、公園ってこんなに賑わう場所なんだと驚いた。ここも銀杏がきれい。開館時間ちょうどぐらいに来たものの、東京国立博物館には既に大行列ができていて、館内に入るまでに15分くらいかかった。はにわの特別展をやっていて、色々な形のはにわがいておもしろかった。魚や、ヒナを連れた水鳥の形のはにわがかわいかった。それにしても人が多い。みんなそんなにはにわが好きなんだなあ。常設展もおもしろく、刺繍がいっぱいの歌舞伎の衣装や、きらきらした螺鈿細工の箱が特にきれいだった。ゲーム「刀剣乱舞」でキャラクターとして登場する刀の実物も見られた。
 博物館前の広場でホットドッグを買って食べ(チリソースが辛くておいしかった)、今度はすぐ傍の国立西洋美術館に行った。モネの特別展をやっていたけど、あまりの人の多さ、行列の長さにそれは断念した。それでも、常設展だけでも十分におもしろかった。風景画と静物画が特に好きかもしれない。
 山手線だの東京メトロだのを乗り継いで、千駄木で降りる。気になっていた「雑貨と本 gururi」に辿り着くと、「本日は臨時のお休み」との張り紙があった。タイミング…! こういうのも旅行らしくて良いか。
 東京メトロに乗って、さらに山種美術館へ。日本画っておもしろそうと思えたきっかけの美術館で、いつかは絶対に行ってみたいと思っていたから嬉しい。恵比寿駅のコインロッカーが埋まっていて預け損ねたキャリーを引きずりながら並木道を歩いていたら、お店の前でパイナップルケーキが売られていて、気になって足を止めた。お店の方が試食をくれて、おいしかったのでパイナップルケーキとココナッツケーキをひとつずつ買った。どこから来たのかと訊かれ、ちょこっと会話をして別れた。旅先でこういう交流ができると本当に嬉しい。今回の旅行で行ったどの場所もそうだけど、山種美術館も「来て良かったなあ!」と思える場所だった。前まで日本画というものにはあまり興味がなかったけど、SNSで山種美術館の投稿を見て、なんとなくいいなと思えるようになり、今その実物を見ている。特別展の福田平八郎は、桃と鮎が好きな人らしかった。東京国立博物館と国立西洋美術館でもそうしたように、好きだなと思った絵のポストカードをミュージアムショップで何枚か選んだら、ほとんどが速水御舟の絵になった。なるほど、私はこの人が描く絵が好きなのか。
 JR埼京線と京王井の頭線、名前だけは聞いたことがあるような電車に乗って、下北沢で降りた。壁と看板(?)の隙間に、空のペットボトルやストロング系チューハイの缶に混ざって咳止めシロップの空き箱が捨てられていて、今日何度目かの「都会だなあ」を感じた。下北沢駅のコインロッカーも埋まっていて(正確には、私のキャリーを入れられるサイズのが埋まっていた)、どこか荷物を預けられる場所はないかと検索したら、近くのカラオケ館が荷物預かりサービスをやっているとあった。コインロッカーより値は張るけど、本当に助かる。ちょっと歩いてみた下北沢の町は、何もかもがおしゃれすぎるというか、「カルチャー」の街という感じだった。恥ずかしながら私は、以前話題になっていたオモコロのPR記事「俺の理想通りのめっちゃいい新生活が始まる日」にあるような生活に内心憧れてやまない。正直、福岡市内に出てきたのも、もしかしたら都会ならそういう生活に近付ける可能性があるのではという下心がなかったとは言い切れない。記事にあったのは下北沢ではなく世田谷代田だったけど…と思いながら調べてみたら、下北沢と世田谷代田は隣駅だった。なるほどな。
 商店街「BONUS TRACK」に着くと、もう、眩しいくらいに憧れが詰まっていて目が眩みそうだった。すごかった。具体的にどう表現したら良いか分からないけど、ああ私はこういう場所で楽しく過ごせる人間になりたかった、と痛感した。おしゃれなカフェやスタンドでドリンクを飲んだり、きらきらのイルミネーションの下で静かに本を読んだり、創作仲間と集まってイベントを企画したり、実際の私は社不(※社交不安障害)をこじらせすぎてとてもじゃないがそんな芸当はできない。コンプレックスのあまりおしゃれなお店には近付けないし、飲み食いしている自分が誰かの視界に入るのが怖いし、周囲に人がいる状況で趣味に没頭することはできないし、人付き合いが満足にできないことに現在進行形で苦しんでいる。もちろん、こういう場所で楽しく過ごしているように見える人にだって人には人の地獄があったりなかったりするのだし、私もここに来てみて良かったと心底思いはしたけど、私は「俺の理想通りのめっちゃいい新生活」を送れない人間なんだなと改めて思い知らされた気がした。こんな素敵な場所でここまでネガティブにものを考えるのももったいない気はする。でも、結局私は人と関われないことが色々な悩みの根源にあるんだなと思った。
 それでもおっかなびっくり、BONUS TRACK内のお店に入る。「日記屋 月日」でZINEを2冊買い、「本の読める店 fuzkue」に行った。どちらも本当に素敵な空間で、自分が場違いで挙動不審な振る舞いをしているんじゃないかと恐れおののきながらも、SNSで見ていた憧れのお店にいる喜びを噛み締めた。fuzkueはすごく静かな空間で、自分の声や咀嚼音を気にするタイプの社交不安障害患者にはかなりハードルが高いお店なのではと席に着いてから内心焦ったものの、結果的に居心地の良さの方が勝って安堵した。フヅクエオリジナルのブレンドコーヒーと、チーズケーキがものすごくおいしかった。月日で購入したZINEの1冊を読み、G.ガルシア=マルケスの『エレンディラ』を途中まで読み、『ここで唐揚げ弁当を食べないでください』を読み終えた。Spotifyで聴いていたフヅクエのプレイリストの曲が店内で本当に流れていて、聞いたことがある曲だと気付けたのがちょっと嬉しかった。2時間ほど過ごして、お会計をしてお店を出た。本を読んだからなのか、当初の若干動転したような気持ちが穏やかになって少し落ち着いた。見かけたキャロットケーキの看板に心惹かれて、YOYOでひとつ購入した。キャロットケーキは自分で作ったものしか食べたことがなかったので、いつかお店のものを食べてみたいと思っていたのだった。憧れの生活には辿り着けなくても、憧れのお店で過ごして、憧れの食べ物を買うことはできて嬉しい。お店の方曰くすごくスパイスが効いているそうで、食べるのが楽しみ。
 小田急線と都営地下鉄でホテル傍の駅まで向かう。福岡でさえ若者の多さにびっくりしていたけど、それにしても東京の人の多さ、特に若者の多さは凄まじい。地方から姿を消した若者達はここにいたのか。ビジネスホテルにチェックインして荷物を置いて、財布とエコバッグを持って近くの成城石井に行ってみた。夜になって割引になったお惣菜やスイーツ(タコスミートのトルティーヤ、シフォンケーキのせプリン)を買って、部屋で食べる。キャロットケーキは想像以上にスパイシーで、とてもおいしかった。ずっしりと濃厚な生地と、軽くてまろやかなチーズのクリームがよく合う。これはちゃんとコーヒーを用意して頂くべきお菓子だった。
 今日の歩数は22,458歩。

2024/12/01 Sun.
 成城石井のパンを食べ、ホテルを出て都営地下鉄に乗る。神保町で都営三田線に乗り換え。神保町もいつかは降りてみたい。白山駅のコインロッカーも全敗。キャリーを引きずり坂を登って坂を下って、小石川植物園に到着。園内にコインロッカーがあって助かった。ここも気持ちのいい植物園で、木々の間を歩いているだけで癒される。いくつもある温室には、見たことのない植物がたくさん並んでいる。時々、見覚えのあるマユハケオモトやセイロンベンケイもいる(以前これらの植物を育てていた)。花は咲いていなかったけど、ショクダイオオコンニャクの大きな鉢植えもあった。タピオカノキ、タマゴノキ、ソーセージノキといったユニークな名前の樹木も。かわいい蘭の花があちこち咲いている。鉢植えだけど、キソウテンガイもいた。冷温室には、色々な山野草が植わった小さな鉢植えがぎっしりと並んでいて、ここも見ていて楽しかった。植物園に辿り着くまでにちょっと時間を食ったのもあり(思ったより距離があった)、のんびり植物を見ていたらいつの間にか電車に乗る予定の時間になっていて、慌ててキャリーを引っ張り出して駅に戻った。薬園植物園を見られなかったのが悔しいので、いつかまた来なければ。
 駅のホームにお花屋さんやケーキ屋さんがあることに仰天しながら移動。運良く当初の予定と変わらない時間に、ゆりかもめに乗ることができた。ゆりかもめは、見慣れない東京の街並みを存分に眺められて楽しい。新橋駅のコインロッカーがいっぱいで諦めかけたところ、幸いにも東京ビッグサイト駅のコインロッカーが空いており、嬉々としてキャリーを押し込んだ。念願の文学フリマ東京は、これまたものすごい人の数だった。一般入場の列に並んでいると、周りから「審神者」だの「ウマ娘」だのといったワードが聞こえてきて、なんだか妙な居心地の良さを感じた。私はこういう場所でこそ楽しく過ごせる人間ということなんだろう。それにしても、ここにいる人はみんな文学が好きなんだと思うと、すごい。ジャンルは多岐に渡るにせよ、「自らが〈文学〉と信じるもの」を愛する人間がこんなに集まるとは。ビッグサイトの西3・4ホールは本当に人、人、人で歩くのも大変だったけど、あらかじめWebカタログで目星をつけておいた本を探して宝探しのように歩き回るのは楽しかった。用意した小銭がすっからかんになるほど買った。本を購入した時にちょこっと会話が発生することもあって、それがすごく嬉しかった。私はあなたの本を買えて喜んでいるし、あなたも本が売れたことで喜んでくれている?
 ずっしり重たくなったリュックのベルトを肩に食い込ませ、キャリーを引きずり出してゆりかもめに乗る。新橋駅でJRに乗り換え、日暮里駅でおにぎりを買い、スカイライナーに乗って成田空港に戻ってきた。途中、車窓から「荒川区立第五中学校」という文字が見えて、「第五!?」「ひとつの区で第五中学校まで!?」と驚いた。本当に人が多い。成田空港で家族へのおみやげを買い、人から飛行機のチケットの見方を訊かれて答え、帰りの飛行機に乗り込んだ。窓の外は真っ暗だったけど、下の方を見るときらきらした夜景が広がっていてきれいだった。さっき買ったばかりのZINEを読み、バウチャーでオニオンスープとアップルパイをもらい(後者は帰宅してから食べることにした)、なぜか帰路は全く耳が痛くならずに済んだ。
 福岡空港から地下鉄に乗ろうとすると、nimoca(交通系ICカード)が見当たらない。コートのポケットに入れたような、ポシェットに入れたような。スカイライナーを降りるまではあったから、成田空港か飛行機の機内でなくしたんだろうか。物が詰まったリュックサックやトートバッグをひっくり返すのも面倒なので、諦めて切符を買って帰路に就いた。マンションに辿り着き、荷物を下ろし手洗いうがいを済ませ、即シャワーを浴びた。うっかり座ってしまいようものなら、きっと疲れて動けなくなるに決まっている。この判断は大正解で、帰宅して1時間も経つ頃には布団の中でぬくぬくすることができた。全ての荷解きは明日やろう。チャージが一万円くらい残っているnimocaは、明日探そう。今回の旅行は、乗換案内アプリと地図アプリを頼りに結構色々うまくいって、私も遠出が随分上達したんだなあとほくほくしていたのに、最後の最後でnimocaをなくした。そんなことでバランスを取ろうとしなくてもいいのに…。でも、見つからなかったら再発行すれば良いし、マンションのカードキーをなくすよりははるかにマシだ。「疲れたけど楽しかった」と思える旅行ができて良かった!
 今日の歩数は19,619歩。

購入したポストカード
・「睡蓮、夕暮れの効果」クロード・モネ
・「ジヴェルニー近くのセーヌ河支流、日の出」クロード・モネ
・「セーヌ河の朝」クロード・モネ
・「花と果物、ワイン容れのある静物」アンリ・ファンタン=ラトゥール
・「果物籠のある静物」コルネリス・デ・へ―ム
・「芥子花」福田平八郎
・「芥子」小林古径
・「芥子(写生)」速水御舟
・「名樹散椿」速水御舟
・「牡丹花(墨牡丹)」速水御舟
・「秋茄子」速水御舟

週間日記(2024/11/18-11/24)

2024/11/18 Mon.

 猫達の写真をたくさん撮った。もちろん、たくさん撫でもした。猫ってなんであんなにかわいいんだろう! 一昨日は最初警戒した素振りを見せたとらちゃんも、すっかり私に甘えてきてくれる。夜中にはふくちが私のベッドに来て足元に陣取ったので、一緒に寝た。すごくよく眠れた。

2024/11/19 Tue.

 朝、高速バスに乗って福岡へ戻ってきた。年末年始の帰省までとらふくに会えないと思うと、すごく寂しい。でも、私はいくら寂しくても良いから、とらふくさえ寂しい思いをしていなければそれが一番良い。寂しいかどうかは、本人達に訊いてみないと分からないけど(訊いても分からない)。
 部屋に戻ってきて、お昼を食べてキャリーケースの荷解きをして、今日はあまり歩いていないからと天神まで行ってうろうろしてきた。おかげで、今日一日の歩数が一万歩を超えた。
 就労移行支援の事業所から電話がかかってきて、相談支援事業所と相談支援員が決まったとの旨を伝えられた。ここに来て初めて知ったけど、就労移行支援と計画相談(?)とやらは別々の場所が担当するらしい。どこかの段階で説明を受けたっけ? 覚えていない。その後、相談支援事業所の相談支援員の人から電話が来た。来週、相談支援員さんが自宅(私の部屋)を訪問して、生活状況だのこれまでの経過だのの聞き取りをするらしい。お茶とか出した方が良いんだろうか。

2024/11/20 Wed.

 昨夜ショックなことがあって、悶々としながら寝た。今朝目が覚めて、ベッドから出る前にそのことを思い出して、また気持ちが沈んだ。自分がどうこう意見できるものじゃないし、他人の考えや意見を自分の思い通りに変えようとするなんておこがましいことだと頭では分かってはいても、悲しい。
 就労移行支援。職務経歴書の作成についてのプログラムを受講した。またしても、例としてテキストに載せられた「きれいな」職務経歴書に嫉妬。
 就労移行支援が終わってそのまま区役所の健康課に行こうと思っていたので、途中のミスドでお昼を食べた。台湾胡椒餅風パイがすごくおいしかった。胡椒ってかなり好きかもしれない。地図アプリを頼りに初めて通る道をせっせと歩いていると、手書きの大きな文字で「植物屋」と書かれた看板を見かけて、とても気になった。気になったけど、なんだか入りづらいおしゃれな一角に置かれているので、気になりながらも通り過ぎた。区役所の健康課で、昨日電話で相談支援員さんから区へ提出するように言われた申請書を書いたものの、マイナンバーの数字が分からないと手続きできないと言われてしまった。数字を覚えていないし、マイナンバーの通知カードも家に置いているので、通知カードを持ってまた明日来ますと伝えてすごすご退散した。浴室の電球が切れていたので、ビックカメラで新しい物を買って、歩いて帰宅。今日の歩数も一万歩を超えて嬉しい。
 帰り道に、自分と年齢が近そうな人が一人ですき家に入っていくのを見かけた。私は一人でごはん屋さんに入ることがとても苦手で、個人のお店はもちろんチェーンの店ですら気後れしてなかなか入れないけど、別に禁止されている訳じゃなし、こうしてお店に立ち寄って良いんだよなあと思った。チェーンのカフェなら辛うじて入れるものの、それだと外出先で食事を摂ることになった時の選択肢がかなり限られる。一人で回らないお寿司やホテルのディナーを食べたいなんて言わないから、せめて牛丼チェーンやファミレスなんかにはためらわず入れるようになりたい。あわよくば、近所のスパイスカレー屋さんや多国籍料理屋さんにも行ってみたい。何でも病気と結び付けて良いものか分からないけど、不安を感じるという点では、一人でごはん屋さんに入れないのも社交不安障害の症状のうちなのかもしれない。
 文学フリマ福岡で買ったZINEを読んだ。人の日記本って、やっぱりおもしろいなあ。自分とは違う誰かの生活や考え、感じたことを活字という形で知ることができて、リアルの会話よりも妙に生々しい所がある気がする。この日記本を読んでいた2時間ほどの間は、他人の人生を生きているような、すぐ傍で追っているような感覚があった。私の日記を読んでくれている人も、私の人生を追体験しているような気分になることがあるんだろうか。そう思うと、一人きりでなく誰かと並んで走っているような感じがして、なんだか愉快で心強い。ZINEを読み終わった頃には、すっかり窓の外が暗くなっていた。
 昨夜のことを自分一人では消化しきれない気がして、オンラインカウンセリングを予約した。この消化薬が少しでも効きますように。

2024/11/21 Thu.

 部屋が寒い。先月はやたら暑かったので、夏は困るけど冬場は良いなと思っていたら、単に外の気温に左右されやすいというだけの話だったらしい。床暖房で家中ぽかぽか温かい実家で長年ぬくぬく過ごしてきたから忘れていたけど、築30年のマンションというのはこんな感じだったなと思い出した(大学生の時も築30年くらいの物件に住んでいた)。
 マイナンバー通知カードを持って、再び区役所の健康課へ行った。マンションから歩くと片道40分かかるので、渋々バスに乗った。バスは乗り場や路線がややこしくて、乗車しても人が多くて落ち着かないからどうも苦手だけど、おかげであまり歩かなくて済んだのはありがたい。計画相談の申請書の手続きは、今度はちゃんとできた。帰りは、天神経由で歩いて帰った。近所の商店街に寄って、店の前で売られていたカレー屋さんのタンドリーチキンとカレーのお弁当を買って帰った。家に帰って蓋を開けると、にんにくとスパイスの香りが辺りに充満した。食べてみると、すごくおいしかった。さらっとしたカレーは結構な辛さで、塩味が強いけどおいしい。タンドリーチキンは、今まで食べた中で一番おいしかった。濃いめの味付けで、肉がとにかく柔らかい。いつかは勇気を出してお店に入って、できたての温かいカレーとタンドリーチキンを食べてみたいなあ。
 昨日の区役所では、新しく発行してもらった福岡県の精神障害者保健福祉手帳も受け取ってきた。カバーの中に入っている「手帳のメリット」と書かれた小さな紙いわく、手帳があれば市営地下鉄の運賃が半額になるらしい。知らなかった! これは助かるとうきうきしながら福岡市地下鉄のホームページを見てみたものの、精神は1級のみが割引対象になるとあった(私は3級)。
 就労移行支援。スタッフさんとの面談が1時間以上あった。主に成育歴の聞き取りで、生まれた時から現在に至るまでのことを色々訊かれて話した。私は自分のこういうプライベートなことを人に話すのにあまり抵抗はない方だけど(四コマ漫画に描いてネットに載せる程度には精神的露出狂なので)、話したくない人にはかなりしんどいだろうなと思った。
 先日のショックだった出来事を消化すべく、オンラインカウンセリングを受けた。やっぱりプロというのはすごいもので、「こういうことがあって嫌な気持ちになった」という心境が「嫌な気持ちになったけど、それで良かった」という風に変わった。ひとまず、私の中で折り合いがつけられそうなくらいには安心できた。どうしようかと思っていたから、本当に良かった。助かった。

2024/11/22 Fri.

 就労移行支援。スタッフさんとの面談が1時間以上あった。主に成育歴の聞き取りで、生まれた時から現在に至るまでのことを色々訊かれて話した。私は自分のこういうプライベートなことを人に話すのにあまり抵抗はない方だけど(四コマ漫画に描いてネットに載せる程度には精神的露出狂なので)、話したくない人にはかなりしんどいだろうなと思った。
 先日のショックだった出来事を消化すべく、オンラインカウンセリングを受けた。やっぱりプロというのはすごいもので、「こういうことがあって嫌な気持ちになった」という心境が「嫌な気持ちになったけど、それで良かった」という風に変わった。ひとまず、私の中で折り合いがつけられそうなくらいには安心できた。どうしようかと思っていたから、本当に良かった。助かった。

2024/11/23 Sat.

 就労移行支援。毎回スタッフの誰かを捕まえて今日は何をしたら良いか尋ねるのだけど、正式な利用が始まるまでずっとこれが続くんだろうか。スーパーや商店街に寄り道しながら帰宅。八百屋さんで、ひと玉税込106円という価格の白菜を見て、切って冷凍しようにも冷凍庫は今ぱんぱんだからと、迷いに迷って買わなかった。でも、まるごと1個で税込171円のパイナップルには負けた。途中に、我が家のとらちに似た麦わらっぽい模様の野良猫を見かけた。とらちに方がひと回りまるまるしている。
 さっそくパイナップルを切り分けた。パイナップルの切り方は、大学を出て新卒で入社した果物ジュース店(半年足らずで辞めた)で覚えた。あの頃は何もかもが本当にしんどくて、メンタルがずたずたになるばかりだったけど、そこで教わったパイナップルの切り方とキウイの皮の剥き方だけは今も役立っている。
 今年の春に実家の畑につる苗を植え、引越直前の秋に収穫して寝かせておいた紅はるかを持ってきていたので、オーブンで焼き芋にした。すごく甘いという訳ではないけど、それなりに甘くてちゃんとおいしい。
 夜、寝る前にホットミルクとクッキーで夜食にした。一人暮らしの部屋でこんな穏やかで楽しい夜を過ごしているなんて、去年までの私だったら想像もできなかったし、羨ましくて歯噛みしていただろうな。
 くすんだピンク色のネイルポリッシュを買ったので、両手の爪に塗ってみた。多分、爪をピンク色に塗るのは人生で初めてだと思う。思春期に入って自分の容姿に強いコンプレックスをこじらせるようになって以来、自分みたいなのがピンクなんてかわいい色を身に着けてはいけないと強迫観念のように自身に対して呪いをかけていた(社会からかけられた呪いでもある)。最近になってようやくその呪いが解け始める兆しが見えてきて、私がどんなに不美人だろうとかわいい色を身に着けたければそうして良いのだと、頭では理解できてきた気がする。ピンク色のぴかぴかした爪を見ると、こんなかわいい色に爪を塗ることができるほど私は私のことを許せるようになっているんだなと思えて嬉しい。
 この時間に、マンションのどこかからか掃除機をかける音がする。離れた場所にある部屋のようでうるさくはない。見知らぬ誰かも同じ建物の中で生活してるんだと思うと、ちょっと安心する。

2024/11/24 Sun.

 目覚ましアラームをセットせずに寝たら、たっぷり10時間も寝た。心身がしっかり休まって、リセットされた感覚がある。
 見ず知らずの人が、もう4回ほどインターホンを鳴らしてくる(4回とも同じ人)。引っ越してきてすぐのネット回線の営業で学習したので、ずっと居留守を使っている。NHKの集金か何かだろうか。
 パジャマのまま、台所で3時間ほど過ごした。小松菜といんげんをゆでて冷凍して、玉ねぎも切って冷凍して、厚揚げと長ねぎの煮物を作って、朝ごはんに食べるトマトスープを4食分作って、ミートソースを多めに作って冷凍して、さつまいも餡団子パイを作った(焼き芋と市販のあん団子を冷凍パイシートで包んだもの)。実家で家族の分もごはんを作っていた頃は、確実においしいものを作りたかったからレシピを見て料理していたけど、自分1人の分なら失敗してもいいし調味料を量らずに作れるようになりたいと思って、分量を何も量らずに煮物とミートソースを作ってみた。ところが、適当に作ったにも関わらず、1回目の味見の時点で既にかなりおいしいものになっていてびっくりした。
 パイを焼く間にも、ちょこちょこと部屋を片付けたり掃除をしたり。自炊するし、洗濯もきっちりやるし、掃除も最低限は嫌々やるし、整理整頓は得意だし、昼夜逆転せず生活できるしごはんも食べるし、仕事さえしなきゃちゃんと生きていけるんだと自分を慰めているような、褒めているような。仕事をすればこれら全てがめちゃくちゃになるけど。私は駄目な人間なんだとめそめそしていた期間が長かったので、色々な自信や自尊心がかなりすり減っていたけど、今回一人暮らしを始めてみると「私にもできることが意外とある」と気付けて嬉しい。できないことには目を瞑っていこう。
 ようやくエアコン周りの掃除をして、暖房をつけてみた。部屋がぽかぽかと暖かいと、すごく気分が穏やかになる気がする(ささくれだっていた訳ではないものの)。温かい飲み物を飲んで初めて「私は寒かったのか」「身体が冷えていたのか」と気付くこともあるので、部屋に温度計を置いて、室温が何度を下回ったら必ず暖房をつけるといったルールでも決めておこうかな。
 真っ赤に熟れたコーヒーの実を収穫した。今年は合計10粒採れて、今日の収穫はそのうちの6粒。先に収穫した4粒はほったらかしていたから、しわしわに萎びさせてしまった。今日の6粒の実から種を取り出して、種の周りのゼリー状の果肉(?)を擦り落とした。乾燥したら、フライパンで炒って焙煎の真似事をしてみようと思う。去年もたったひと口分とはいえこうして自家製コーヒーを作れてすごくおもしろかったけど、まさか今年も同じことができるとは。
 夜、窓の外からTime to say goodbyeが聴こえてきた。誰かが歌っているのか、スピーカーで流しているのか。寒くさえなければ、窓を開けて聴いてみたかった。初めて人間の歌声を美しいと思ったのは、小学生の頃にコンサートでこの曲を聴いた時だった。その時に歌手の人達が着ていたクリーム色のドレスと水色のドレスをなんとなく思い出した。

週間日記(2024/11/11-11/17)

2024/11/11 Mon.

 目覚ましアラームをセットせずに寝たら、なんと11時間も寝た。前日が寝不足気味だったとはいえ、自分でもびっくりした。
 博多駅まで30分歩いて行って、駅ビルとその周辺で買い物をした。4年は使ったパソコンのマウスがついに言うことを聞かなくなったので、淡いペパーミントグリーンのマウスを新しく買った。なんとなく装いたい欲が湧いて、数百円台のプチプラアクセサリーをいくつか買った。アクセサリーを買うのは随分久し振りな気がする。花やリボン、雪の結晶などのモチーフを選んだ。どれもかわいい。「アクセサリーは自分のような醜い容姿の人間が身に着けてはいけない」という呪いがまだ解けきれていないので、実際にそれらを身に着けて出かける勇気が出ないかもしれない可能性はあるけど、とりあえずはそれらを買ったというだけでまずは呪いを解く第一歩としたい。帰りも30分歩いて、今日の歩数も一万歩を超えた。東京旅行に備えて、たくさん歩くことに慣れておかないといけない。
 晩ごはんに肉味噌炒飯を作ってみたら、すごく適当に作ったのにやたらおいしくできてしまった。ただし、調味料の分量が分からないので、同じものは二度と作れない。

2024/11/12 Tue.

 またしても10時間半も寝た。こんなに寝られるものなのかと驚く。
 今週末の帰省の荷造りをしたり、帰省と東京旅行に着ていく服をそれぞれ考えたり。服はたくさんあるはずなのに、それらを組み合わせるとなると途端に何を着て良いか分からなくなるから難しい。

2024/11/13 Wed.

 就労移行支援。スタッフの人から、就労移行支援の利用に向けての調査だか審査だかがあることと、その際に自宅を訪問することがあるとのことを伝えられた。自宅に人が来ると言われるとちょっと及び腰になるけど、それでもどうやら正式な利用に向けて話が進んでいるらしいと分かってほっとした。事業所のサイトを見てみると、就労移行支援の利用が適切かどうか、自治体の職員が生活状況などの聞き取りをするとある。これで万が一審査が通らなかったらどうすれば良いのだろう。その時はその時で考えるしかないけど、ちょっと不安ではある。家事はするし、生活リズムも特に乱れてはいないはずだし、私の場合は仕事さえしなければそれなりに健康的な生活を送ることができる。ただし、正社員としてフルタイムで仕事をした時は、長くは続かなかったとはいえ全てがめちゃめちゃになった。今度はどうだろうな。
 就労移行支援が終わって、そのまま少し遠い方のスーパーへ買い物に行った。橋を渡った時、地元の川に比べるとドブのようだと感じた川の中に魚の群れが泳いでいるのを見つけて、びっくりしたし嬉しかった。ドブなんて言ってごめん。

2024/11/14 Thu.

 旅行に備えてとにかく歩く体力をつけておきたいので、また博多駅まで歩いて往復した。一人暮らしを始めてからというもの、出歩く頻度も一日の歩数もうんと増えている。部屋に一人でこもっているよりは良いはずだ(部屋で一人過ごすのも大好きだけど)。街路樹の間をモンキチョウがひらひら飛んでいるのを見かけて、こんな都会じゃアブラナ科の植物も見つけるのが大変だろうと不憫に思った。マルイでKALDIやBleu Bleuetのかわいいクリスマスグッズを眺めて、チョコレートが入った500円くらいのアドベントカレンダーを買った。アドベントカレンダーというものに憧れていたので、手を出しやすい値段のものがあって嬉しい。絵柄は大きなクリスマスツリーに森の動物達が集まっているメルヘンなもので、とてもかわいい。店頭で見つけられなかったけど、KALDIのサイトで見たドリップコーヒーのアドベントカレンダーも気になる。クリスマスに向けて毎日違うコーヒーが飲めるなんて、ものすごい贅沢だ。帰り道、昨日は魚が泳いでいた川を見たら、一匹の亀がコンクリートのかたまりの上で甲羅干しをしていた。冬の学校のプールのような澱んだ緑色をした川だけど、私が思っている以上には水質が良いのかもしれない。今日は靴底が薄い靴を履いて歩いたからか、いつもよりさらに脚が疲れた。この疲れ具合は一万歩を超えただろうと思ってiPhoneの歩数を見てみると、一万歩まであと500歩だった。惜しい。

2024/11/15 Fri.

 就労移行支援。おしぼりを畳んで袋に入れたり、アイロンビーズを決められた分量通りに測ったりする訓練。手が滑ってビーズを床にぶち撒けたらつらいなと思いながらの作業だったけど、最悪の事態は避けられた。
 近くの駅のコインロッカーに預けておいたキャリーケース(名前は「親不孝号」)を回収して、そのまま帰省。途中、熊本駅に寄る機会に恵まれたので、アミュプラザ熊本のステラおばさんのクッキーにいると聞いた推しのパネルを拝みに行った(期間限定でゲーム「魔法使いの約束」とコラボしている)。まさか見られるとは思っていなかったので、本当と嬉しい。パネルの写真を撮っても良いか店員さんに尋ねると快く許可してくれて、そそくさとスマホを取り出して撮影した。
 乗り継いだ高速バスが、市内の渋滞で遅れに遅れて途中には30分遅れにまでなった。車内は満員だし、前の座席のおじいさんは渋滞に関して大きな声で悪態をついているしで、なんだかぐったり疲れてしまった。おじいさんの悪態の穴埋めをするように気持ち大きめの声で「どうもありがとうございました」と運転手さんに声を掛けながらよろよろとバスを降りて、迎えに来てくれた母の車に乗り込み、実家の玄関で気付いた。バスの荷物棚におみやげを忘れてきてしまった。初めてのことで動揺しながらネットで運行会社の電話番号を調べるも、電話の受付時間はとうに終わっている。とりあえず明日になってから電話をするとして、あーあ。その後、歓迎してくれた猫達のおかげで気落ちは大幅に緩和された。

2024/11/16 Sat.

 営業時間になるやいなやバス会社に電話をかけた。私の忘れ物は宮崎市内にあるという。送ってはもらえないそうなので、明日取りに行きますと内心しょげながら伝えた。悪いのは忘れた私なんだけども。そして宮崎行きの高速バスを予約した。せっかく実家に帰ってきているのに、一人で往復4時間のバス旅に時間を費やすのか…。
 気を取り直して、先々月までずっとやってきたように家じゅう掃除機をかけ、ありったけの洗濯物を干し、物がたくさん置かれたダイニングテーブルの上をすっきり片付けた。それから、両親が出かけている間にと私の小さな畑を軽く耕し、百均で買っておいた6種類の花の種をこっそりまいた。芽が出るかは分からないけど、雑草とは違う切り花用のきれいな花が突然咲いたら悪い気はしないだろうし、特に近所の祖母は喜んでくれそうな気がする。
 精神科までの馴染みの道を歩いていって、診察を受けた。一人暮らしを始めたことと、就労移行支援に通おうと思って今は体験利用に行っていること、結構元気でよく出歩いて歩き回っていることなどを話した。困ったことなどはないかと主治医の先生に尋ねられて、これといって特に具体例が思いつかず、せいぜい昨日のバスの忘れ物くらいだと思った。これから仕事を見つけられるかとか、働き続けることができるかとか、一人暮らしできるだけの収入を得られるかとかといった将来の不安はもちろんあるけど、今は「どうにかなるかもしれない」という希望を信じられているし、現状まだ困ってはいない。「悩みや不安があるにはあるけど、まあ、なるようになるんじゃない?」という、数年前の私がなりたくてなりたくてたまらなかった境地に現在の私が至っているらしい事実に気付いて、すごくびっくりした。
 帰宅して、両親とお昼を食べ、明日高速バスで忘れ物を取りに行こうと思っている旨を伝えると、母が「今日でも良いじゃん」「ドライブしようかな」と言い出した。なんと車を出してくれるらしい! 用事で父が一緒に行けなかったのが残念だったくらい、愉快なドライブになった。クラシック音楽(マーラーの巨人やチャイコの悲愴)を聴きながら母とおしゃべりして、サービスエリアでソフトクリームを買って食べたり、宮崎駅のおみやげ売場でチーズ饅頭や日向夏のお菓子を買い込んだり。忘れ物も無事に回収できた。ずっと一緒に暮らしていると、合わない部分が出てくるし嫌な思いをしたりさせたりするけれど、やっぱりこの人は何でも楽しむのが上手で、とことんポジティブで、私の大好きなお母さんだなと思えて嬉しかった。

2024/11/17 Sun.

 午前中は、昨日取り戻したおみやげを持って近所に住む祖母の家へ遊びに行った。お茶をしに行くと伝えてあったけれど、テーブルの上には食べきれるか怪しいほどの量の天ぷらがひしめいていた。祖母とおしゃべりをして、お腹いっぱい天ぷらを食べて、お茶をおかわりして、一緒にクロスワードを解いた。祖母が嬉しそうにしていてくれて良かった。
 午後は、七輪で色々な食材を焼いて食べた。椎茸にさつまあげ、ウインナー、ピーマン、冷凍のチヂミ、おにぎり、お餅、どれもおいしかった。
 ひたすら食べた一日だった。こわごわ体重計に乗ってみると、なんとここ1ヶ月で2㎏減っていることが分かった。BMIも少し数字が小さくなって、「前肥満」から「普通体重」ぎりぎり(本当にぎりぎり)の範疇に収まっている。甘い物は相変わらず我慢せず食べていたけれど、やっぱり日々たくさん出歩いて歩数を稼いだのが良かったんだろうか。お腹周りが苦しかったデニムも、割とすんなり履けるようになっていたのは、こういうことだったのか。

週間日記(2024/11/04-11/10)

2024/11/04 Mon.

 オーケストラの演奏会を聴きに行った。曲目はマーラーの交響曲第1番「巨人」、ワーグナーの楽劇「トリスタンとイゾルデ」より前奏曲と愛の死、リストのハンガリー狂詩曲第2番。オーケストラに関しては複雑な思いが色々あったけど、やっぱり生で聴くオーケストラはすごく良い。自分の楽器を失って、自分はもう演奏する側にはならないのだという安心感があるせいか、ステージの上と客席にいる自分とをほとんど切り離せて他人事として音楽を楽しむことができて、音楽を嫌いにならずにいられたことに安堵した。トリスタンとイゾルデを演奏会で聴くのは多分初めてだったけど、これが特に良かった。深い霧や幾重にも重なったヴェールの中を進んでいくような、泉の水がごぼごぼ湧き出している様子を見ているようなイメージが思い浮かぶ、神秘的で壮大な曲だった。こんなにおもしろい曲だったのかと思い、帰宅してからはYouTubeで何度か聴いた。マーラーの巨人もおもしろかった。4楽章の最後の方でパーカッションや金管が大暴れしているのが、特に楽しくて盛り上がった。アンコールの曲は曲名を知らない曲だったけど、いかにもニューイヤーコンサートで演奏されていそうな、多分シュトラウスだろうなと思う曲だった。
 やっぱりクラシックの演奏会って良いなとしみじみ思い、他にも演奏会に行ってみたいと思い検索してみたところ、演奏会ではなくバレエの公演を見つけた。しかも、バレエ作品の中で私が一番大好きな「くるみ割り人形」! チケットが5,000円するのでちょっと迷ったものの、実際に見るプロのくるみ割り人形を見たらどれだけ心動かされるだろうというわくわく感が勝って、結局チケットを購入した。とても楽しみ。

2024/11/05 Tue.

 一人暮らしを始めてからのここ一ヶ月は毎日のようにどこかへ出かけていたので、いい加減のんびりしておこうと思い、一日パジャマで過ごすことにしてみた。快適だし、洗濯物が少なく済むので良い。
 むしょうに食べたくなって、晩ごはんに肉じゃがを作った。おかげで、今日という日が「特に何もしなかった日」から「おいしい肉じゃがを作った日」に格上げされた。

2024/11/06 Wed.

 就労移行支援。手続きや面談などはしていないので、これは体験利用ということになるんだろうか? 目標を立ててそれに向けて何かをすると決まっている訳でもなく、ただ事業所に来て漫然と過ごしている。今日は職務経歴書の作り方についてのプログラムを受講した。テキストにある職務経歴書の例が、私のように無職期間だらけでぐちゃぐちゃじゃない「きれいな」職務経歴でむしょうに羨ましく、妬ましかった。仕事を辞めるに至った明確で分かりやすい理由があり、長い空白期間もなければ、いくつもの仕事を短期間で辞めてきたということもない。例に挙げられた架空の職務経歴書の持ち主にもその人なりの地獄があるのだろうけど(実在しない人物とはいえ)、他人の芝生の青さに容易に嫉妬する自分が恥ずかしくて情けなかった。プログラムが終わった後、何もせずに過ごす時間が30分ほどあり、つらかった。何をすれば良いかスタッフに尋ねれば良いのだろうけど、どのスタッフさんも別の利用者の対応をしているか、忙しそうに奥で作業をしているかだし、中途半端な時間ともなれば「休憩していてください」とでも言われる可能性がある。正式な利用はいつ始められますかと勇気を振り絞って訊こうかと思ったものの、見学初日に対応してくれたおそらく担当になるのであろうスタッフさんは途中から姿が見えず、話しかけられずじまいだった。
 ぐったりと気疲れしながら、事業所を出てバスに乗った。午後はマンションの貯水槽清掃で3時間ほど断水になるので、図書館で過ごす予定にしていた。図書館の中をうろうろして落ち着けそうな隅の席を見つけ、まだ冒頭しか読めていない『ケルト人の夢』を開いた。幸い集中できて、3時間ほどかけてみっちり読書に励むことができた。3分の2ほど読み進めた。凄惨で残虐な描写もあるので、人間が嫌いになりそうだった。この後に何らかの救いがあると良いのだけど。

2024/11/07 Thu.

 今日も一日パジャマで過ごし、2時間かけて『ケルト人の夢』の残りを読み終えた。すごい物語だった。人間の善性と悪性、信仰や神、愛国心、植民地主義、そうしたテーマについて考えさせられる内容で、読んでいて楽しいという感想が湧く作品ではないけど、良い作品だった。私は愛国心やナショナリズムというものを毛嫌いしていて、そういうものはなければないほど良いと思っていたものの、対するこの歴史小説の主人公はその愛国心やナショナリズムに燃えている。読み進めていくうちに、自分のルーツへの誇りの在り方のひとつなのだと理解を示せるような気がしてきた。他者を攻撃し排外主義を助長させる要因になりうる危険なものではあるけれど、自らのルーツに対する心情だと思えば、のどかな地元愛とも案外地続きなのかもしれない。また、他の国や人種に支配され従属させられている側のマイノリティ性について考える時、自分のルーツというものの重要性はより一層大きくなるんだろう。コンゴとアマゾン、そしてアイルランドの人々が置かれた不当な状況に怒りを覚えると同時に、自分が生まれ育った国はイギリスと同じように他国の人々を虐げる側であった歴史を思うと、やりきれないものがある。そして、パレスチナなどのように、現在進行形で激しく迫害されている人々がこの世界にはいる。

神の存在が一度も問題とはならず、むしろそれは確実であり、その存在のおかげで世界は秩序を保ち、すべてのものに対して、その存在の意義と理由を見出すことができる人々は実に運がいい。(p.415)

 これは「確かに」と強く頷いた一文で、本当にそうだと思った。私は神のような絶対的な存在がはたしているのか自分自身で確かめたいと思っていて、宗教や精神作用性物質、トランスパーソナル心理学にその答えを求めたけれど、いずれもそれが「ある」という前提で話が進むように感じた。対する科学はというと、もちろんそういうものは「ない」とばっさり切り捨てられた世界観だ。自分が心の支えにする対象の存在の有無を疑うことなく、確実にあり揺らがないものとして信じることができたらどんなに救われるだろう。信仰の対象と信仰心が欲しいと願うこと自体が邪な気はするけど、実際そうなのだから仕方がない。
 本の内容とかけ離れた俗な話題になるけれど、実際の「推し活」が「推し」に出会って初めて自然と始まるもので、商業ベースで語られるそれは「推し活をするために推しを探そう」と順序が逆になっているように、私の「何かを信仰したい」という欲求もそれと同じ気がする。自分が推しを本当に好きなのか、推しは実在するのか(?)といったことをぐるぐる考えず、ただ推しが好きというポジティブな感情だけでオタクができたらそれに越したことはない。とはいえ、推せる信仰対象には出会いたい。

2024/11/08 Fri.

 就労移行支援。もしかして私の知らない内に、正式な利用に向けた手続きなんかがスタッフの間で進められているんだろうか。日本語ワープロ検定の過去問に取り組んだ。
 以前食べたみそカツパンがすごくおいしかったので、また食べたいと思いコメダ珈琲店へ行ってみた。アイスコーヒーと一緒に注文して、巨大なみそカツパンを前にわくわくしながら食べ始めた。ざくざくに揚がったカツと甘めの味噌だれがとてもおいしくて、この味噌だれだけでも自分で作れたらなあと思った。3分の2を食べ終えた頃にはもうお腹がいっぱいで満足していたけど、それでも残すという選択肢はもちろんないので全部おいしく平らげた。シェアして食べてくれる人を見つけられない私のような人間は、胃袋が若いうちにこういう食べ物を満喫しておいた方が良いのかもしれない。
 1300kcalの昼食を摂ったせめてもの罪滅ぼしとして、天神まで歩いて行ってぶらぶらして、一万歩以上歩いた(それによって消費したカロリーはわずか300kcalに過ぎない)。百均で買い物をしたついでにニトリを覗いてみたら、すごくかわいいアルパカのぬいぐるみと目が合った。大きめのぬいぐるみだけど税込999円というお手頃価格、そしてもふもふの白い毛並みは手触りが良く、顔立ちもとてもかわいらしい。すごく欲しくなって、店内を一周する間に頭を冷やそうと思ったけど、結局買ってしまった。持参した大きなエコバッグに入れたけど、アルパカ自体が大きいのでバッグの縁からかわいい顔がはみ出した状態で連れて帰った。一緒に散歩をしているような気分で楽しい。帰宅してから、アルパカのぬいぐるみにつける名前を考えた。Wikipediaでアルパカのページを見て、学名にある「ビクーニャ」という名前にすることにした。アルパカの鳴き声について「フェ~」と書いてあって、そのユーモラスな鳴き声も名前の選択肢として迷ったけど、最初に決めたビクーニャにする。なんだかかっこいいし。当のビクーニャさんは、かっこよさとは無縁のとぼけたかわいい表情をしている。

2024/11/09 Sat.

 就労移行支援。文書の作成などに使えるデザインスキルについて学ぶ動画を視聴した。
 帰宅して、明日以降の朝ごはんに食べるための野菜スープを作った。コンソメと塩胡椒で味付けをした。具材が多すぎて、スープというよりポトフのようになってしまった。野菜がたくさん食べられるから良いか。

2024/11/10 Sun.

 月末に控えた東京旅行の計画を練り直した。その場で焦って調べなくても済むように、利用する公共交通機関についても念入りに調べて、食事を摂れそうな場所もある程度下調べをした。持っていく物のリストを作ったり、着ていく服を考えたり。旅行の準備って本当にわくわくする!
 それから、ZINEの形にしてみたいと思っている原稿を作った。文章を書いて、写真も入れて、ちょっとした絵も描いて載せたい。自分が趣味としてやりたい創作が全部盛り込めるから、ZINEというカルチャーが流行っている時代で良かったと思う(それでなくても作りたいけど)。目安として締切を設けないと多分完成しないから、今月中に完成させられたらいいなと思っているけど、義務にすると途端にやる気がなくなるので我ながら塩梅が難しい。でも、私だけの本を作っている時間は本当に楽しい。子どもの頃も紙の切れ端で絵本を作ったりしていたから、その頃とやっていることはあまり変わらないのかもと思うと、少し愉快な気がする。

週間日記(2024/10/28-11/03)

2024/10/28 Mon.

 就労移行支援に行く。3日間の体験が終わり、ここに通所したい旨は伝えてあるので、今日あたり面談などがあって正式な利用に向けた手続きが始まるのかと思いきや、まだそういう気配がない。データ入力練習プログラムを使って顧客伝票の入力間違い探しをしたり、Wordでワープロ検定の過去問を解いたり。おもちゃのお金を使って、リストに指定されたそれぞれの金額を入れた封筒を作る作業をしたり。大したことはしていないけど、就労移行支援の見通しが立たず先が見えないせいか、どっと疲れた。

2024/10/29 Tue.

 天神に歩いて出かけた。PARCOでやっているBOOK MEETS FUKUOKAというイベントに、どんな本があるか見に行くだけのつもりで行ったところが、大手の書店ではなかなか出会えないおもしろそうな本が色々あって、うんと厳選して3冊をレジに持っていった。『家父長制はいらない』と『働くことの人類学』、文学フリマで買い損ねたZINEを1冊。
 足を延ばしてLOFTに行くと、きらびやかなクリスマス用品コーナーができていた。大きなくるみ割り人形も何体か並んでいて、クリスマス気分が高まるようでわくわくした。JELLYCATのかわいいぬいぐるみのコーナーに、小さなペンギンを抱き締めたペンギンのぬいぐるみがあり、すごくかわいかった。ブロッコリーやさくらんぼ、たこのぬいぐるみもかわいい。ぬいぐるみってやっぱり好きだなあ。
 甘辛く煮たじゃがいもが食べたくなって、商店街でじゃがいもを買ってきて煮物にした。煮崩れ寸前まで煮汁が煮詰まり、味がよくしみて我ながらすごくおいしい煮物になった。以前作って冷凍していた大根と鶏肉の煮物を解凍し、賞味期限が迫ったパウチのひじきの煮物も温め、煮物ばかりのラインナップでごはんを食べた。未だ無職だし、就労移行支援も利用が始まらないしでこの先やっていけるのだろうかと不安にはなるものの、おいしい煮物が作れると少し自信を取り戻せる気がして安心する。

2024/10/30 Wed.

 就労移行支援に行く。Wordでワープロ検定の過去問をやった。特にスタッフの人から何か教わるということもなく、一人でテキストを見て学ぶような感じだったので、これはわざわざ就労移行支援に来てまでしなくても良いんじゃないかという気はした。ただ、ここに来れば他のことはできないので集中しやすいという点と、WordやExcelのテキストを無料で見られるという点は良いかもしれない。とりあえず、私にとっては他人のいる空間で過ごす練習が大事なのだと自分に言い聞かせている。でも、元々の知能の特性由来の不安や疲労なら、今さら練習したところで変化するものではないし、ただ疲れるだけで無意味なのではないかとも思える。
 注文していた棚が届いた。大きな家具を購入するのはこれが最後で、床に積み上げた段ボール箱の中身を収納するために買ったので、これを組み立てればいよいよ部屋が完成する。家具が増えていよいよ狭くなった部屋で半ば自棄になりながら組み立てたので、かなり杜撰な仕上がりにはなった。次の引越があるなら、この棚はおそらく耐えられないと思う(壊れるので)。けれど、段ボール箱5箱分の中身がきれいに収納できて、片付け終えた部屋はすごくすっきりした。段ボール箱が部屋の中に積み上げられていないという状態はとても良い。ちゃんとここに腰を落ち着けて、この部屋で暮らすんだという意欲と安心感が湧いてくる。住みかを快適に整えるというのは、思っていた以上にメンタル面への良い影響があるらしい。

2024/10/31 Thu.

 初めて歩いて博多駅まで行ってみた。地図アプリには片道30分とあったけど、意外と歩けるものだった。博多駅近くの電気屋さんに行き、欲しかったtapoのスマート調光LEDライトと、安くなっていた好みのデザインのペンダントライトを買った。他にもお店をうろうろして、また30分歩いて帰った。結局3時間ほど休憩なしで歩き回っていたらしく、さすがに脚が疲れた。
 元々付いていたシーリングライトを取り外して新しい照明に付け替えると、これがとても良かった。電球色はやっぱり暗いけど、部屋全体が暖かみのある雰囲気になってすごく良い。tapoのアプリをインストールして、明るさも調節できて便利だ。そして、tapoのアプリにログインすると実家に設置しているtapoのカメラも見ることができてしまう。一人暮らしを始めてからは、実家を覗き見するのも悪いからとアプリをアンインストールしていた。久し振りに見るカメラには、ひんやりマットの上でぐうぐう寝るふくちが映った。やがて起きて大きなあくびを2回して、立ち上がってぐっと力強い伸びをしてみせてくれた。カメラ越しの映像とはいえ、リアルタイムで見る猫の様子は本当にかわいい。5分に1回の頻度で見てしまいそうだ。

2024/11/01 Fri.

 就労移行支援。テキストを見て、セルフモニタリングについて学ぶプログラムに参加した。行動と気分の関係性についてという内容をスタッフの人が説明し、それぞれワークシートに取り組むというものだった。テキストには、「気分はコントロールしにくいが、行動はコントロールできる」「行動をコントロールすることで、気分をコントロールすることができると言える」とある。ワークシートでは、自分の気分に何らかの影響を与えた行動とその時の気分の種類と程度を書き出した(ex: おやつを食べた、嬉しい70%)。そうして行動と気分を可視化したうえで、自分がネガティブな気分になる行動を減らし、ポジティブな気分になる行動を増やすという目的だそうだ。なんだかなあ、という気持ちになった。そんな簡単な話ならどんなに良いだろう。気分も行動もコントロールできないというのが症状なのに、支援者側から「コントロールできる」と言い切られてしまったら、なんだか気分と行動がコントロールできていない原因が自己責任や努力不足に帰結してしまう気がする(それも症状由来の被害妄想なのかもしれない)。精神科に通院する必要のない、健康な人にとってはこういう主張やワークシートも良いのかもしれないけれど、散々気分に振り回され続けてきて、行動もひどく制限されてきた社交不安障害当事者の一人からするとどうも釈然としない。
 就労移行支援の事業所の帰りは大雨だった。「都会はちゃんと道路が舗装されているからきっと地元より水溜まりが少ないはずだ」とかつては期待していたけど、実際に来た都会は排水が悪すぎて、道路がひび割れてでこぼこだらけの地元を圧倒的に水溜まりの大きさと深さが上回る。膝から下がびしょ濡れになりながら、巨大な水溜まりを避けたり踏んだりして帰った。
 好きなゲームの推しキャラの誕生日なので、キャラが好きそうなヴィクトリアサンドイッチケーキを作った。ここでの最初のお菓子作りを、好きなキャラクターの誕生日に捧げることができて嬉しい。生地の表面は少し焦げたけど、ラズベリージャムとホイップクリームをたっぷり挟んだおいしいケーキができた。
 夕方、意を決してトイレ掃除とお風呂掃除をやっつけた。頑張った。面倒ついでに湯船に熱いお湯を張ってゆっくり浸かり、お風呂が魂の洗濯というのは本当だなあとしみじみ感じた。自分一人が暮らす部屋をきれいに掃除して、自分一人のために溜めたお湯で温まると、なんだか自分という人間は大事に扱って良いものなのかもという気になってきて、夕食をインスタント食品で済ませるのをやめ、作り置きやパウチの和風おかずを温めてきちんとごはんを食べた。布団のカバーやシーツも洗濯して取り換えると、ちゃんと生活をしているという実感がいよいよ増す。この部屋に引っ越してきてちょうど1ヶ月、当初に比べてかなり快適な住環境が整った。狭くはあるけど、自分の好きなデザインの家具を選んで、好きな物ばかりを並べた部屋というのはとても良い。自分が居心地良く、気分良く過ごせるようにあつらえた自分だけの部屋。昼間は防水パンプスの中にまで雨水が溜まってすごく気が滅入っていたけど、今は快適な自分の部屋でお風呂を済ませごはんも食べ、外の雨音を聞いている。とても気分が良い。
 せっかくの良い気分だからうんと良い夜を過ごそうと、温かい飲み物を用意して、ペンタブを出してきて以前描いた絵に色を塗った。チャイティーラテは凄まじく甘くてコーヒーが欲しくなったけど、良い気分で良い夜だから、それも一人で笑い飛ばせた。

2024/11/02 Sat.

 「人と関わりたいけど関われない」という問題を自分一人では解決できそうになく、専門家の手助けが欲しくてまたオンラインカウンセリングを受けてみた。初めてお会いする臨床心理士の方に頼んでみた。精いっぱい正直に悩みを話すと、「嫌われたくない」「がっかりされたくない」「見捨てられたくない」「不機嫌にさせたくない」という他者に対する素直な欲望がつらつらと出てきて、自分でも笑ってしまいそうだった。泣くつもりは全くなかったのに、笑うどころか涙がぼろぼろ出てびっくりした。「理想の自分と今の自分はどれくらい離れていますか」と訊かれて、とっさに思いついた数字として「50kmくらい」と答えた。良い人を演じていない素の自分が何をどう感じているか、言葉にしてみるようにと言われた。理想としている自分と現実の自分の間の今はかけ離れている距離を少しでも縮めるために、その時々の自分が気持ちを都度言葉にしながら50kmをゆっくり移動するというイメージが思い浮かび、俳句を読みながら旅をする松尾芭蕉のようだと思った。50kmかけて自分探しの旅か。モナカうまっ(ギャグ日)。

2024/11/03 Sun.

 福岡市南区にある花畑園芸公園の園芸まつりに行く。昨日までの雨が嘘のような良い天気で、来ている人も多かった。園芸というより地域のイベントという感じだったけど、果樹や樹木が色々植わった園内を歩き回るのは楽しかった。お昼はカフェでメキシカンジャンバラヤとアイスコーヒーのセットを頼み、温室を眺めながら食べた。おいしかった。
 バスに乗って福岡市内へ戻り、今度はけやき通りののきさき古本市に行った。思っていた以上に人がたくさん来ていて賑わっていた。道沿いに並べられた色々なジャンルの古本を眺めて、ブックスキューブリックの店内も覗いた。本好きが集まって楽しそうにしている雰囲気が味わえて良かった。
 そこからさらに歩いて、気になっていた九州レインボープライドの会場に行ってみた。商業色が強いイメージがあり、事前に見たサイトには「FTMとは…心の性は男性、身体の性は女性」との表記があったのでどうかなと思っていたけど、性的マイノリティがお祭り気分を満喫できる空間というのは良かった。ブースのひとつでプログレス・プライド・フラッグを購入し、別のブースでは「PRIDE」と書かれたタトゥーシールを手の甲に貼ってもらった。クエスチョニング・フラッグのアイテムが何かあれば欲しいなと思って、さまざまなフラッグのシールの山から探していたら、カラフルなメイクと服装をしたスタッフさん2人が親身になって対応してくれた。クエスチョニング・フラッグのグッズはなかったけれど、「クエスチョニング」という単語の意味を説明するまでもなくそれがすんなり伝わって、当たり前のもののように会話ができたことがすごく嬉しかった。今まで言われてきたような「何それ?どういうもの?」とか「普通に男性を好きにならないのか?」とか、自分のアイデンティティについて疑問を向けられたり、「普通の」異性愛者ではないのかという質問を投げかけられたりすることがない状況が、こんなにも快適で安心できるのかと驚いた。さすがに歩き疲れたのでパレードまでは見ずに帰ったけど、良い体験ができた。
 マンションに帰ってきて、脚がかなり疲れていたものの、今日を逃すとまた次の土日まで機会がないからとリサイクルステーションに段ボール箱の束を出しに行った。おかげで玄関がすっきり片付いた。

週間日記(2024/10/21-10/27)

2024/10/21 Mon.

 朝、高速バスと新幹線を乗り継いで福岡へ戻ってきた。せっせと荷解きをして、溜まっていた雑用をちょこちょこと片付けた。
 こちらは地元とは比べ物にならないほど若者が多く、カップルも多い。手を繋いだり、腕を組んだりして歩いているカップルをよく目にするうちに、32年生きてきて初めてそういうもの(手を繋いで歩くカップル)に対して羨ましさを覚えて、自分でもとてもびっくりした。他人といるととてつもなく疲弊するけど、それでも誰か特定の親しい相手を作ってみたい。久し振りにそう思って、マッチングアプリを入れてみた。ところが、やっぱり自分からいいねをする勇気がない。当然、何も始まらない。シスヘテロのマッチングアプリで想定されている恋愛市場において、自分のような芋は圏外にいるだろう自覚はあるので、顔写真は載せていない。それでも、中途半端な個性しか取り柄のない自分のような妖怪からいいねが来ることで、嘲笑されるのではないかという恐怖がある。醜い容姿を恥じて人と関われない怪物の気持ちだ。好きなタイプとやらについて考えてみても、他者と関わった経験値が少なすぎて、いまいちぴんと来ない。「眼鏡をかけていたら親近感が湧くかも」「読書や園芸なんかの共通の趣味が何かあれば話が楽しいかも」とぼんやり考えてみても、「じゃあ自分自身でいいじゃん」と完結してしまうような項目しか思い浮かばない。自分とは異なる趣味や価値観を持つ他者と一定以上に親しくなる方法が分からないし、そういう未来も全く見えない。せっかく福岡市内に住んだのだから冬にはクリスマスマーケットに行ってみたいけど、一人で行った所でカップルの多さに恐れをなし、ろくに楽しめもせず尻尾を巻いて逃げ帰るであろうことだけは確実に分かっている。マッチングアプリをする勇気が出ないからカウンセリングを受けるというのも馬鹿々々しい気がするけど、仕事が長続きしない原因と同じ「人と関わりたいけど関われない」という問題が根本にあるので、そう思えばカウンセリングを受けるに値する理由と言えなくもない。臨床心理士による対面のカウンセリングは、ちょっと調べた限りでは1時間程度10000円と高額だったので、受けるとしたら5000円で済むオンラインのものが良いだろう。果たして、積年の悩みがカウンセリングで改善するんだろうか。もう諦めてそういうものだと受け入れてしまった方が楽になるのかもしれない。でも、特別に親しい誰かと手を繋いで歩いてみたい。どうすればいいのかなあ。

2024/10/22 Tue.

 就労移行支援の体験の2日目。提案された作業をする合間に、何もすることがない時間がちょこちょこ発生して、それが苦痛だった。元々「何もしないでいる」状態で過ごすことはとても苦手だ。手元にあるパンフレットはとっくに読み尽くしたし、手頃な場所に読む文字もなければメモに書くような内容もなく、本当にすることが何もない。スタッフさんの手が空いた隙を狙って「終わりました」と報告しに行き、次は何をすれば良いか尋ねるものの、「休憩とかしなくて良いですか?」と訊かれ「勘弁してくれ!」と内心叫びたいような気持ちだった。もう十分休憩時間は取ったし、そもそも他人がいる空間で休憩すること自体が私には難しい。暇ってこんなにつらいんだ…。今日やった作業といえば、パソコンのデータ入力練習プログラムのようなもので、表示されたアンケート画面の文字を入力したり、画面上の顧客伝票と入力画面を見比べて入力欄にある間違いを探して修正したりというようなものだった。タイピングの正確さと速さは問題ないはずだと自分では思っているし、誤字脱字を探すのも本を読む時にしばしば見つけるから得意な方ではあると思う。こういう仕事の求人があるなら、業務内容だけなら大丈夫なのではと思うけど、他人がいる静かな空間で一日これをやれと言われたら話は変わってくるだろうな。働くとなると逃れられない条件ではあるだろうものの。
 先日受検した「タイピング技能検定イータイピング・マスター」1級の合格認定証が届いた。長文が心配だと思っていた割には、普通にちゃんと合格できた。イータイピングはともかく「マスター」という名前が、なんだかポケモンマスターやアイドルマスターを思わせて、資格の名前としては少しシュールな気がする(オタクだからそう思うだけかも)。

2024/10/23 Wed.

 九州国立博物館と太宰府天満宮に出かけた。電車に乗り慣れていないから、電車に乗ると妙な特別感があってうきうきする。太宰府天満宮は外国からの観光客がとても多く、境内も参道も賑わっていた。お守りを販売している所で、Twitterで知って気になっていたお守り「菓子守」を購入した。「製菓業に励む方々のご活躍とご繁栄、そして素敵なお菓子との出会いを祈願したお守り」とあり、和洋菓子のイラストが描いてあってとてもかわいい。お守りという物を買ったのは、おそらくこれが初めてな気がする。食い意地が張っている自覚があるので、これ以上ないお守りだと思う。せっかく神社に来たのだからと浮かれて、つい恋愛おみくじなるものまで引いてしまった。「吉」と出た。おみくじを引いた経験自体あまりないので、大吉よりは悪く凶よりは良いのだろうということくらいしか分からず、中吉や小吉、末吉などと並べるとどういう順番になるのかも分からない。それよりも、結婚と異性愛が前提に書かれた内容に「うわっ」と思ってしまった。婚姻制度を利用するタイプのシスヘテロのみが対象だと、どこかに注意書きでもしておいてほしかった。クィアみくじとかないんだろうか。
 九州国立博物館に行く時の長いエスカレーターは、いつ来てもわくわくする。ガラス張りの大きな建物が見えるとさらに。歴史が得意な訳ではけっしてないけど、土器や青銅器、埴輪、仏像、古文書などを眺めるのはおもしろかった。人類の長い歴史を思うと、自分の短い一生における悩みを一時的に忘れられるような気がする。確か中学生の時に修学旅行で初めて訪れた時にもあったはずの、白檀や丁子などの香木の香りを実際に嗅ぐことができるコーナーや、かっこいいと思ってここでそのキーホルダーを買った三角縁神獣鏡の実物を見られて懐かしかった。当時一番印象に残った、フリーメイソンのモチーフが象られた螺鈿細工の箱だったかは見ることができなかった。私が見逃しただけか、収蔵庫にいるのか。ゲーム「刀剣乱舞」の私の最推しの刀は細川忠興の刀なのだけど、館内をうろうろ見て歩いていたら細川忠興の書状があってびっくりした。まさか博物館に来て、突然公式からの供給があった時のオタクの気分になるとは。
 ミュージアムショップまでしっかり堪能して、神社の敷地内にあるお店で親子丼と梅ヶ枝餅を食べた。どちらもおいしかった。お店を出る時に、梅ヶ枝餅を焼いてくれた店員さんの前を通ったので、ちょっと勇気を出して「おいしかったです」と伝えると「また来てね」と言ってもらえた。すごく嬉しかった。コミュニケーションが取れたのももちろん、年上の女性から、気さくに敬語抜きで年下扱いしてもらえるのがまた嬉しい。参道のおみやげ屋さんや雑貨屋さんを覗き、ソフトクリームの誘惑と闘い、電車と地下鉄を乗り継いで帰宅。

2024/10/24 Thu.

 就労移行支援の体験3日目。事業所の部屋で過ごした時間の半分は、何もすることがない虚無の時間だった。本当に、本当に何もすることがなく、ただただスタッフさんに話しかけられるタイミングを待つだけの、虚無。ぼーっとすることが苦手な私に、ぼーっとするための訓練を強いているのかと勘繰りたくなるほどだった。私はまだ正式に利用している訳ではないし、忙しいスタッフさんの手を煩わせるのも申し訳ないからこうして「今なら話しかけても大丈夫そうかな」という機会を窺うしかないけど、これが実際の仕事だったらまたややこしいんだろうな。人と時と場合によって、「忙しいから後にして」とも「分からないことがあるならすぐに訊いて」とも言われるんだろう。今日の作業は手先を使う作業だった。内容は、指定された色と個数のアイロンビーズを小さなチャック付きポリ袋に入れる作業と、これも決まった色と位置のゼムクリップを紙に留める作業。集中して黙々と業務に取り組めるか、自分で適性を見るような目的があるらしい。なんとなく、賽の河原で石を積んでいるような気分で作業をしていた。実際、親より先に死のうとしたのだから、地獄があるなら実際に賽の河原で石積み作業に励んでいたかもしれない。手芸をするから手先は多少は器用だろうという自負があるし、黙々と集中して作業することもできるどちらかといえばできる方だと思う。でも、正式にここの就労移行支援を利用して、もし毎日この作業だったらちょっとつらいだろうなと思う。仕事で満足な給与が発生するならともかく、「本当にこれをしていて就職に繋がるんだろうか」という不安や疑心暗鬼がどうしても付き纏うだろう。タイピングの練習にしてもそうだ。でも、業界最大手らしいここでこういう感じなら、他も似たり寄ったりだろうとは思う。家から近いし、雰囲気も悪くはなさそうなので通うならここがいいと思っており、正式に利用するつもりではいるけれども。プログラムの豊富さが売りのひとつだそうなので、これ以外にも作業内容があるはずだと信じたい。
 虚無と石積みに疲弊して、何か楽しいことをしたいと思い、「公園で本を読む」という一度やってみたかった行動にチャレンジしてみた。スワンボートが泳ぐ広い池を前にしてベンチに座り、日差しと風を浴びるのは気持ち良かった。パン屋さんで買ってきたパンを食べ、池の水面に時折現れる亀の写真を撮り、持ってきた本のページをめくった。直射日光の下にいるとそれなりに体力を消耗するので、たくさんは読めなかったけど、精神面のエネルギーを回復するにはとても良い時間を過ごせた。かなり大所帯な外国人観光客の団体が来ていて、私が端に座っているベンチで写真を撮ろうとしていたようだったので、他人(私)が写り込まないよう席を譲ってみた。色々話しかけてくれた内容は、中国語(多分)だから全然分からなかったけど、その中で日本語の「ありがとう」を言ってくれて、すごく嬉しかった。観光客グループが中国の国旗を掲げているのをその後に見たので、私も「謝謝」と言えば良かったなと思った。池を泳ぐ大きな鯉を見て、すぐ近くにいた中国人観光客の人と顔を見合わせて笑ったのも嬉しい体験だった。言語が通じなくても、国籍が違っても、鯉のデカさにはしゃぐという共通の楽しさを分かち合える事実がむしょうに嬉しかった。旅行に来た先で一人の日本人を嬉しい気分にさせてくれたあの人達が、観光をうんと楽しめますように。
 昨日「大濠公園の敷地内にきのこが大量発生している」というネットニュースを見たので、読書の後はその辺を散策した。残念ながらきのこの大半はもう狩られて(職員さんに取り除かれて)しまっていたのでなかなか見つからなかったけど、タマゴテングタケとウスキテングタケ、ハエトリシメジっぽいきのこが生えているのを発見して興奮した。それから、松ぼっくりやくぬぎ、スダジイ、種類の分からないやたら大きなどんぐりなどがごろごろ落ちていて、これもテンションが上がった。どんぐりや松ぼっくりを見て楽しい気持ちになれると、私もまだ完全につまらない大人になり下がった訳ではないなと妙な安心感が湧く。自然といっても都会の中でしっかり管理された雑木林だから、本当の自然というやつはもっと雑草や蔓が生い茂って鬱蒼としているんだぞ、こんなこぎれいなもんじゃないぞと変な対抗心を燃やしてしまう。それでも、やっぱり緑の木々の枝葉を眺めながら歩くのは気持ちが良かった。また来よう。できれば雨が降った翌日に。

2024/10/25 Fri.

 二度寝を繰り返して、結局11時間も寝た。こんなに寝ることができるのかと、自分の可能性に驚いている。
 徒歩15分のちょっと充実したスーパーで買い物をして、一旦部屋に荷物を置き、それから徒歩10分の小さいスーパーに行ってミネラルウォーターや牛乳などの重たい物を買ってきた。本当に一人暮らしの量なのかと疑いたくなるような食材を買い込み、リュックサックが重たくて後ろにひっくり返りそうだった。自炊を頑張ろうという意欲に満ち溢れている。
 朝ごはんに食べるトマトスープや、晩ごはんに食べるかぼちゃのグラタンを作り、すぐ使えるように種類ごとに切ってポリ袋に入れたものと、一食分の鍋を作るための切った野菜の詰合せとを同じくポリ袋に入れて冷凍した。実家でならもっとうんと早く終わるような作業内容だったけど、3時間も台所に立っていたらしい。まだ慣れない調理環境ではあるものの、物が揃って随分使いやすくはなった。

2024/10/26 Sat.

 行ってみたいと思っていた福岡市植物園に出かけた。地下鉄の駅から徒歩15分程度なら余裕で歩けるなと調子に乗っていたら、道程の半分くらいは上り坂だった。舐めていた。動物園は本来の生息地から離れた狭い檻の中に閉じ込められている動物が気の毒に思えてあまり好きではないので、ほとんど素通りした。他の動物に食べられる危険性がなく、食事も十分に与えられ、怪我や病気をしても適切な手当てをしてもらえるという点では野生の状態よりずっと良い暮らしをしていると言えるから、かわいそうだと思うのは単なる私の思い込みにすぎないかもしれないものの。植物園は動物園を通り過ぎてさらに坂を上った場所にあり、辿り着く頃には汗をびっしょりかいていた。秋だからそろそろ薄手のニットを着たいと思っていたけど、着てこなくて本当に良かった。雑木林のように植えられた樹木の中を歩き回り(ここも階段だらけで足腰が鍛えられた)、蚊に刺されたりオドリコソウの葉を食い荒らす大きな毛虫に慄いたり、園内の地図と睨み合って自分の現在位置を把握しようと努めたり、冒険しているようで楽しい散策だった。温室は想像以上に充実していて、コウモリランやヒスイカズラ、カスタノスペルマム、ベニヒモノキ、ヤコウボク、コーヒ―ノキ、バニラ、アセロラ、パパイヤ、マンゴー、グァバ、ジャボチカバ、ジャックフルーツ、パイナップル、三尺バナナ、ウツボカズラ、ムシトリスミレ、モウセンゴケ、ベゴニア、フクシア、オオオニバス、犀角と色々な植物があった。春に大阪の咲くやこの花館でも見たけれど、一年の内にまさか二度もキソウテンガイを見る機会に恵まれるとは思わなかった。ここでもタビビトノキは温室の屋根にぶつかっていて、ガラスの天井(比喩ではない)をぶち破りそうな勢いで生長していた。それにしても、自宅から数十分の場所にこんな植物園があるなんて最高だ。帰りは下り坂ではあったけど、近くのバス停まで行く便があったのでバスに乗った。地下鉄はいくらか乗り慣れてきたつもりではあるけど、バスはやっぱりまだ慣れない。狭くて他人との距離が近いし、座席の確保は難しいし。
 夕方、注文していたメタルラックが届いた。観葉植物の鉢植えを並べるために購入したもので、今月は引越で随分お金を使ったのに、生活必需品でない大きな買い物をまだするのかと散々悩んだ挙句、収納家具を買わないことにはいつまでも部屋が片付かないからと言い訳して注文した。狭い部屋でなんとか組み立てて、窓際に置き植物を並べると、これがとても良かった。自分の好きな物をぞんざいに扱っている感じがなくなり、きちんと大事に扱っているように思えてすごく良い。私は私の好きな物を大切にしていると目に見えて分かる。もちろん、床の一角に段ボールを敷いてぎゅうぎゅう詰めに置いていた時より、はるかに見栄えも良い。これは良い買い物をした。

2024/10/27 Sun.

 タクシーを利用してリサイクルステーションまで行き、潰して束ねた段ボールを2束分処分した。すっきり。
 それから、ずっと楽しみにしていた文学フリマ福岡10に出かけた。会場は博多駅から徒歩10分ちょっとの場所にあり、地図アプリを見ながら向かう途中、「もしかして文学フリマに行く人かな」と思うような人達が何人か近くを歩いていた。同人誌の即売会に行く時の懐かしい感じを思い出して、すごくテンションが上がった。会場に入ると、創作意欲と個性に満ち溢れていて、そこにいるだけでわくわくしてくるような場所だった。あらかじめWebカタログで目ぼしいブースはチェックしてあったので、印刷してそれらを書き込んだ配置図を見ながら本を買い求めた。見本誌コーナーで見たらおもしろそうなものもあって、それも買った。本の作者に「こんにちは、これください」と声をかけて直接購入する感覚が10数年ぶりくらいで本当に懐かしかった(即売会に参加した回数は片手で数えられるくらい少ないけど)。一言二言とはいえ会話をすることもあって、人と話すのって楽しいな、しかも創作に関する話題ができるなんてと感動したくなった。こういう時、私は人と関わることがとても苦手だけど、嫌いという訳ではないしむしろそれを求めてはいるのかもしれないと気付かせてもらえる。この日のために用意しておいた小銭を思ったよりも多く使い、10冊ほどの本をほくほくしながら持ち帰った。文学フリマ、良い文化だなあ。冬の東京一人旅では文学フリマ東京39にも行くつもりなので、こちらもとても楽しみ。
 部屋に帰り着いてから、さっそく今日手に入れた本を何冊か読んだ。どれも個性的でおもしろくて、私も絶対に近い将来こういう本を作るんだ、本作りを趣味にするんだという創作意欲が掻き立てられた。

週間日記(2024/10/14-10/20)

2024/10/14 Mon.

 Twitterに戻りたい気持ちになる時もあるけど(今は閲覧専用にしている)、ワコールの件でおすすめ欄やら何やらがトランス差別ツイートだらけになっているのを見ると、やっぱりこんなSNSは利用しない方が良いなと思ってしまう。至極まっとうなことしか言っていないと私は思ったけども。
 美容室に行く段になって緊張し始めた。でも予約してしまったものは仕方ないので、腹を括って行った。美容室の店内にはスタッフさんもお客さんも私以外はお洒落な人間しかいなくて、すごくいたたまれなかった。こういう時、自分がどんなに醜くてもここまで気にせず自然体でいられたら、どんなにいいだろう。実際は「助けてくれ」と叫んでその場から逃げ出したい思いだった。梳いて毛先を整えてもらって、染めたかどうか分からないくらいほんの少しだけ髪色を明るくしてもらった。お会計をして逃げるように美容室を後にして、美容室って一般的にはもっと楽しい気分で行く場所なんじゃなかろうかといぶかりながら帰ってきた。
 マンションの郵便受けを見ると市政だよりが入っていて、一面に福岡市総合図書館の記事が大きくあった。それを見た途端、頭の中が図書館でいっぱいになってしまった。そうだ、図書館! 大きくて蔵書が充実した図書館があるんだった!
 お昼ごはんをさっと作って食べ、図書館へのアクセスを調べてさっそくバスに乗り込んだ。最寄りのバス停から20分ほどで着き、図書館に入ると、人の多さに驚いた。祝日とはいえ、図書館を利用する人がこんなに多いなんて! それから、貼り紙やチラシの数と内容にも驚いた。演奏会、映画、講演会、サークル、文化的なイベントの多さが凄まじい。改めて地元との文化的な格差を思い知らされ、地団駄を踏みたくなるほどだった。私はもう福岡市民だからこういうものに参加できるけど、もし田舎にいたままだったらと思うとやりきれないものがある。貸出カードを作り、まずは館内をひと通り見て回ることにした。広さはもちろんのこと、圧倒的な蔵書数に慄いた。おもしろそうな本がこんなにたくさん、一生かかっても読み切れないほどあるという事実、わくわくとにやにやが止まらず、マスクを着けていて良かったと心から思った。よだれが出そうだった。大学の文学部時代に図書館で読んだ本も何冊もあり、懐かしかった。癖が抜けずについ心理学のコーナーも覗いてしまい、今まで見たことがないほど多い専門書の冊数にびっくりした。また、辞書や事典の多さにも驚いた。ここに来ればどんな調べ物も、「いかがでしたか?」の定型文と大量の不快な広告を目にすることなく可能になる。
 館内をひとしきり見て回って、それから心理学のコーナーから社交不安症に関する本を抜き取って、席に着いてぱらぱらと眺めた。『SSRIとSAD SSRI最前線No.7』(ライフサイエンス)と『社会不安障害』(日本評論社)の中身を覗いてみて、特に後者には「うわっ」と思うような内容が書かれていた。「社交の技術は若年期に学習されなければならない」(p.28)という一文はぐっさり刺さったし、「全般性社会不安障害が、大うつ病と比べても、さらに大きな自殺のリスクを背負っている」(p.41)の文には、無理もないんじゃないかと思った。将来を考えて絶望するには十分な苦しみが、この病気にはあることを知っている。
 せっかく来たからには何か本を借りようと、迷いに迷って以前から気になっていた『ケルト人の夢』(マリオ・バルガス・リョサ、岩波書店)を借りた。読めるかどうか分からないけど、読みたいと思ったこと自体に意義があると自分に言い聞かせて、もし読めなくても自分を責めないでいられたら良い。

2024/10/15 Tue.

 タイピングの検定を受けておいても良いかもしれないと思っていたので、何かないか調べてみた。ところが、個人の外部受検を受け入れている場所が、どうやら九州四国には沖縄にしかないらしい。福岡県内のパソコン教室にもリンクこそ貼ってあるものの、クリックしてもその先のページが存在しない。何万円も払って指定のパソコン教室に通えば、受検資格は得られるらしい。メジャーよりのいくつかの資格は大体そういう感じで困った。唯一、「タイピング技能検定イータイピング・マスター」という検定はパソコン教室に行くことなく、しかも自宅で受検できるそうで、模擬試験を受けてみることにした。7級から1級、特級まであって、まずは試しに3級を受けてみたところ、しっかり合格圏内に入っていた。1級も合格圏内で、特級はさすがに厳しかった。5500円の検定料を支払い、だかだかとキーボードを叩いた。単語と短文は大丈夫そうだったけど、長文でタイプミスをしたのでどうだろう。結果は1,2週間以内に送付されるとのことだった。
 溜め込んでいた3週間分の週間日記をサイトに投稿した。
 天神をうろうろしていたら、おしゃれな観葉植物屋さんを見つけた。火星人やアルブカ、ディスキディアのカンガルーポケットなど変わった植物が色々あって、見ていておもしろかった。きれいな形のペヨーテが1鉢だけあり、買おうかすごく迷って、今日は我慢した。別の建物には広い手芸屋さんもあって、ここは覗くと予定になかった物を買い込んで何か作りたくなってしまうので、そそくさと退散した。

2024/10/16 Wed.

 引っ越してきたばかりだし、当分引っ越さずにここにいたいけど、次に引っ越す時はベランダに出て過ごせる部屋に住みたいと思った。今の部屋は2階なので防犯の面も気になるし、何より周りの建物が近すぎて、人目が気になる。
 スーパーと商店街で食材を買い込んで、作り置きのおかずをいくつか作った。大根と鶏の煮物、アスパラの豚肉巻き、きのこのきんぴら、ひじきの煮物、たたききゅうりを作り、その他野菜各種を切って冷凍し、ごはんを炊いたのもラップに包んで小分けにして、食パンも一枚ずつ冷凍して完了。長時間稼働していたので、IHコンロがかなり熱くなった。
 単なる身分証明書と化した自動車運転免許の住所変更手続きをした。

2024/10/17 Thu.

 就労移行支援の事業所の見学に行った。パンフレットを渡され説明を聞き、各スペースを見て回った。スタッフさんは親切そうだったし、ビジネスの香りはしっかりありつつも、大手だけあってそれなりにちゃんとしていそうだと思った。ネットで調べた限りここが一番良さそうだと判断したけど、「ここで良かったのかな」「自分はここに合っているのかな」という気にもなった。こればかりは実際に通ってみないことには分からない。「悪くはなさそう」という印象。

2024/10/18 Fri.

 就労移行支援の体験1日目。全部で3日間、午前中で終わる。初日の内容は、これが就労移行支援になるのだろうかと疑問が湧くような内容だったけど、人がいる空間で過ごすことに慣れる練習にはなるかもしれないと前向きに考えた。なんとなく、保育園や幼稚園で過ごしているような気がした。他の事業所もこうなんだろうかと思い、後でよその大手のサイトも見てみたけれど、「障害は隠すものではなく生かすもの」という内容のキャッチコピーが書いてあり、ここには通いたくないなと思った。障害は当事者と社会の間にあるものなのに(社会モデル)、なんだか当事者自身が障害を内包しているような印象を(少なくとも私は)覚えたし、生かせないから障害なんじゃないかと反論したくなる。とりあえず、サイトを見た感じでは「えっ?」と思うような表現が目立つということはなかった気がするので、今日体験に行った事業所を利用してみようかな。ためになりそうな内容のプログラムもあれば、明らかにこれは自分には必要なさそう、合わなさそうだと感じるものもある。ただ、就職率は高いらしいので、そこは少し期待している。
 先日お店で見かけたペヨーテが忘れられず、歩いて買いに行った。つい誘惑に負けて、園芸店で働いていた頃から憧れていたウスネオイデスまで買ってしまった。

2024/10/19 Sat.

 就労移行支援(の見学と体験)に行って仕事について考え、不安になってきたからか、嫌な夢を見た。何かの仕事をしていて、ものすごく大きなミスをやらかして、クビになる夢だった。
 住民票を移してからまだ3ヶ月が経っていないので、以前の住所で期日前投票すべく帰省した。猫達とたくさん遊んで、猫達の写真をたくさん撮った。夜はふくちが一緒に寝てくれた。

2024/10/20 Sun.

 選挙に行った。候補者が3人とも「同性婚の法制化に反対」と主張しているらしく絶望ではあるけれど、それでも憲法改悪反対とか増税反対とか言っているまだマシな方に票を入れた。共産党か社民党かで直前まで迷いに迷って、今回は前者に入れた。
 お昼は七輪で色々焼いて食べた。ソーセージも椎茸も、焼きおにぎりもおいしかった。お腹いっぱい食べた後、5000歩ほど散歩して腹ごなしをした。
 夜、とらちが私の布団に寝そべって、一緒に寝てくれるのかとぬか喜びしたのも束の間、私が写真を撮ったら気が済んだかのようにリビングへ降りていってしまった。