苗床

菌床じゃないよ

大阪一人旅日記 その2

 旅行2日目。物理的に500km以上猫と離れたからか、家の外に脱走してしまったとらふくを泣きながら探し回る夢を見た。嫌な夢!

 朝ごはんは、大阪に何店舗かあるらしいパン屋さんで買ってきたパンをホテルで食べた。せっかくだからどこかカフェに入って食べることに挑戦しようかとも考えはしたものの、都会的なおしゃれな雰囲気に臆して食いっぱぐれる可能性も決してないとは言い切れないので諦めた。

 

 身支度や荷造りが思ったより早く済んだので、予定より30分ほど早く出発することにした。駅には通勤中とおぼしき人達が大勢歩いていて、みんな歩くのがものすごく速い。大阪の人は歩く速度が速いと聞いたことはあったけど、本当に速かった。その中でキャリーを引きずりながらのろのろ歩く九州人としては、道行く通勤客の通行の妨げになっているのではないかとやや申し訳ない気持ちだった。そのうえ、通勤ラッシュにぶつかってしまった!これは誤算だった。これまで経験したことのないような満員ぶりで、身動きひとつ取れず、他人との距離があまりにも近すぎて地獄だった。満員電車というものはひどいものだとつくづく思った。貨物のように車両に詰め込まれて運ばれていると、人としての尊厳がごりごりと削り取られるような心地がする。車を運転できないペーパードライバーとして、車がなくても生活できる都会に憧れてはいたけど、こんなものに毎日乗らなければならないような生活はとてもじゃないが無理だ。都会には都会の問題があることを思い知らされた。

 ほうほうのていで心斎橋駅に降りる。手前の本町で乗客の大半がごっそり降りた時は、思わず「助かった」と呟きたくなった。駅に直結のビルにあるパン屋(これも大阪にだけ店舗があるらしい)に向かうも、やはり駅の広さにびっくりする。都会の人間は田舎の人間に比べてよく歩くと聞くけど、確かにこれは歩くはずだ。植物園に持ち込んでお昼に食べるためのサンドイッチを購入し、また地下鉄に乗る。それにしても、多くの人がダウンやコートなどがっつり冬物の上着を着ている。いくら暑がりとはいえ、自分だけが薄着でいるような気がして少し恥ずかしい。でも全然寒くはない。なぜ。

 

 鶴見緑地駅で下車、コインロッカーが空いていて良かった。今度は鶴見緑地の敷地の広さに驚く。歩いても歩いても目的地に辿り着かないような気さえしてくる。

 

 でも辿り着いた!開館時間より早く着いてしまったので、近くのベンチに座って過ごす。その辺をうろうろしている鳩達がどれもまるまると太っている。いいものを食べているのかな。

 

 10時になり、館内へ。ここも障害者手帳の提示で無料だった。温室の中に入ると、温かくむしむしとした湿度があって、眼鏡が曇る。傘のように持って遊ぶ用のフィロデンドロンの大きな葉っぱが置いてあり、持ち歩きたい気持ちがかなり強かったけど、情けないことに一人でこれを持つ勇気がなく、植物の写真を撮るのにも手が塞がるかと思い断念。でもいいなあ。

 

 

 熱帯雨林植物室だったか熱帯花木室だったか、写真を撮りすぎてどの写真がどの展示室のものだったか分からなくなってしまったけど、とにかくどこも最高の空間だった!したたるような緑の葉が視界いっぱいに広がって、天井にはガラス越しの青空が広がり、歩いているだけで気持ちがいい。

 

 

 

 

 熱帯雨林植物室のそこかしこで、色とりどりの華やかな蘭が満開になっている。蘭ってこんなにたくさん花をつけるものなんだ、こんなに種類が豊富なんだと感嘆するばかり。

 

 

 バンダもカトレヤもこの咲きっぷり。なんて贅沢な眺め!

 

 キダチチョウセンアサガオも咲いていた!精神作用性植物好きとしてはテンションが上がるのを抑えられない。

 

 植物の名前を確認し損ねたけど、果実を見る機会はそうそうないであろう木に実が生っていて、緑色のネットで保護されている。

 

 カシワバゴムノキでもトックリランでもヤシの仲間でも、以前働いていた園芸店で見ていたものとは比べ物にならないほど大きい。ゆうに3mはありそうな、見上げるほどの高さがある。しかも、どれもいきいきしている。ポトスだかフィロデンドロンだかも小さなプラ鉢に収まっているような代物ではなく、地面いっぱいにつやつやとした葉を茂らせている。自生地に近い環境を再現してきちんと育てると、こういう風に成長するんだなあ。

 

 

 ウスネオイデスもコウモリランも、本当に大きい!こんなに大きくなるんだと驚くほど大きい。

 

 青い種子が入った枯れたさやしか見たことがなかったので、タビビトノキの全貌を拝めて感動!天井に届きそうなほどの樹高がある。これ以上成長したらどうするんだろう。

 

 ヒスイカズラや竜血樹、モリンガのように名前は知っていても実物を初めて見る植物、キソウテンガイやキヤニモモ、キャンドルナッツツリーといった名前も存在も知らなかったような植物が無数に育っている。図鑑でしか見たことのなかった植物、初めて知る植物といくらでも出会える。最高!クフェアでもペトレアでもコトネアスターでも、園芸店で毎日水やりをしていた植物が、ポット苗を飛び出して元気いっぱいに茎や枝を伸ばしていている。ヒスイカズラに至っては、つぼみのようなものさえ見える!

 写真を撮る手が止まらず、カメラアプリをずっと起動し続けているので、スマホがどんどん熱くなっていく。

 

 本当にカレーの匂いがする!スパイシーでおいしそうなカレー粉の香り。カレーを食べたくなる。

 

 好きなドラマ「植物男子ベランダー」に出てくるカリアンドラ・エマルギナタ!一鉢の植物を巡って植物しりとりで熱い闘いを繰り広げる際に強力な一手として使われていたカリアンドラ・エマルギナタ、まさかその実物を拝めるなんて。

 

 

 いつか本物のカカオの木を見てみたい、あわよくば木に生っているカカオの実を見てみたいと思ってきたけど、まさかこんなにたくさんの果実を見ることができようとは。こんな幸せなことがあっていいんだろうか!国立民族学博物館で木の模型を見ただけでも楽しかったのに、こんなに立派な木にいくつもの実をつけているのを目にして、もう大はしゃぎしてしまっている。嗜好品として利用される植物、豊かな文化史を持つ植物、人類の歴史や文化の中で大きな役割を果たす植物、大好き!

 

 スーパーのスパイス売場で600円ほどのさやしか見たことがなかったバニラ!植物そのものを見るのは初めてだし、茎に生っている実の香りを嗅ぐのも初めて。きつすぎない、おいしそうな甘い香りがする。家で育ててみたいなあ。

 

 マカダミアナッツの花も満開。どんぐりや栗によく似た花だけど、とても大きい。

 

 

 

 

 バナナにジャックフルーツ、パパイヤ、パイナップル、スターフルーツ、ミラクルフルーツまで実っている!パパイヤも昨日の博物館で模型を見たな。実際に見るジャボチカバのグロテスクさに怯むことさえ楽しい。

 

 乾燥地植物室。トゲだらけのサボテンが大量に植えてあり、絶対にここで転びたくない。ここならもしかしてサンペドロ(ペヨーテとは違う幻覚サボテン)もあるんじゃないかと探してみたけど、それは見つけられず。でもあってもおかしくないと思う。

 

 

 クセロシキオスもアルブカも、自分が育てている鉢植えのものよりもずっと株が大きくて威勢が良い。こういう風に育てるのは難しいだろうけど、もし自分の鉢がこんな大きさになったら管理が大変そうだ。

 

 

 食虫植物も豊富。ウツボカズラはたくさんのウツボット(ポケモン)をぶら下げているし、ムシトリスミレもいくつもの花を咲かせている。

 

 高山植物室に入ると、また別世界。熱帯植物の温室よりも涼しくて快適。

 

 

 

 

 ムスカリ、チューリップ、水仙、アネモネ、プリムラ、シクラメンなどのごく小さな原種がちまちまと植わっていて、ミニチュアのようでとてもかわいい!

 

 エーデルワイスもすぐそこに咲いている。コマクサでもクロユリでもチングルマでも、高山に登らずしてこんな気軽に見られていいんだ…。

 

 いちごだ!「Fragaria SP チベット」のラベルがある。チベットのスペシャルいちご?



 

 温室の外にも庭園があり、植物が植わっている。アカシアが満開!巨大なアボカドやボトルツリー、ジャカランダもあった。

 

 

 テキーラの材料になるリュウゼツラン!いつか見てみたいと思っていた植物が何でもある。

 

 2階にはフォトスポットがあり、熱帯花木室全体を見下ろして写真を撮ることができる。いい眺めだなあ、この写真をパソコンのデスクトップにしたいなあ。植物と一緒に写りたくて、勢いでこっそり自撮りまでしてしまった。

 結局、展示室は2周した。夢みたいに楽しい場所で、終始にやつきが止まらなかった。世界にはまだまだ私の知らない植物がたくさんある。お昼は館内のカフェでハイビスカスとブラッドオレンジのソーダを注文し、持参したサンドイッチを食べた。広場にもヤシなどが植わっていて、大きな植物を眺めながら食べるごはんっておいしい。ミュージアムショップには植物モチーフのかわいい雑貨が色々あった。ショクダイオオコンニャクの花を模した大きな抱き枕があって、買おうかかなり迷ったけど、臭そうという理由でやめておいた。ぬいぐるみなので臭いはしないと思うけど。

 植物園を出て、鶴見緑地駅へ。緑地内には結構な本数のクスノキが植えてある。毛虫対策が大変そう。

 

 プラタナスのような実が生った、メタセコイアに似た木。落羽松(ラクウショウ)という植物らしい。知らない植物に出会ってももう驚かない、ということはなく、やっぱり驚く。

 

 地下鉄と特急を乗り継いで、その間にまた乗り換え間違いをやらかしながらも、なんとか空港まで辿り着くことができた。途中に、同じく乗り換えを間違えたらしい年配の女性に電車のことで尋ねられ、次の電車を待ちながらおしゃべりをした。「あなたみたいに若い人も乗り間違えると思うと安心した」と笑っていて、私も笑った。話の流れで、おすすめのカレーのレシピまで教えてもらえた。流暢な関西弁を聞けたのはもちろん、旅先で出会った人と挨拶以外のたわいない会話ができたのが嬉しかった。

 空港のショップでおみやげを見繕う。調子に乗ってキャリーケースの空いた部分に入りきらないほど買ってしまったので、機内持ち込みのトートバッグに無理やり捻じ込む。

 さらば大阪!またいつか来たい。

 

 またしても羽の部分の座席を選んでしまっていた。今後の教訓として活かしたい。帰りの飛行機では居眠り。降下し始めてからは耳抜きをし、耳の痛みをちゃんと防げた。

 

 ただいま九州!空港にある蘭の寄せ植えを見て、咲くやこの花館の楽しさを思い出す。

 

 高速バスを待つ間、昨日行き損ねたロイヤルホストでシーフードドリアを食べた。自分では作れない味がしておいしかったけど、いかんせん熱くて、下と上顎を軽くやけどした。このひりひりした痛みは翌日まで続いた。

 市内の渋滞で25分遅れでやってきたバスに乗り、旅行の帰り道ならではの寂しさを噛み締める。楽しかったなあ。行こうと思えば(国内なら)多分どこへでも一人で行けること、世界が広いことが分かって良かった。電車を乗り間違えても計画を立て直して目的地に辿り着けたこと、耳抜きをして飛行機で耳が痛くならずに済むようになったこと、知らない人にものを尋ねられて応答できたことなども、ささやかな自信に繋がった。ちなみに、この2日間の旅行中に、3人の人からバスや電車について訊かれた。この人にならものを尋ねても大丈夫だろうと判断されて声をかけてくれたのかもと思うと、こんな光栄なことってないと思う。

 高速バスを降りてタクシーに乗り、自宅へ帰り着いた。父母は演奏会を聴きに出かけていて、猫達が出迎えてくれた。荷ほどき9割とお風呂と洗濯を済ませて、パジャマに着替えるとほっとする。今日の歩数は約12,500歩。楽しい旅行ができて本当に良かった。

 

 博物館と植物園で自分用に買った物。めったに来られる場所じゃないからと思いきって色々買った(ショクダイオオコンニャクの抱き枕を除く)。国立民族学博物館の展示案内、『月刊みんぱく2024年2月号』、オリジナル測量野帳、グアテマラのウォーリードール、ヒエログリフが書ける定規、アイヌ文様マスキングテープ、いつか読みたいと思っていた『キノコの歴史』、咲くやこの花館オリジナルの植物画Tシャツ、ショクダイオオコンニャクのキーチェーン、食虫植物のイラストが描かれたハンカチとクッキー。

 

 植物画のイラストがとてもかわいい!どれも咲くやこの花館にある植物だそう。

 

 博物館と植物園では、写真を200枚超ずつ撮った。これから写真を整理して、どれがどこの地域のどういう資料か、何という名前の植物かなどのメモを残す作業がある。心理学の勉強ができなくなった時、自分には何かを学ぶことがそもそも向いていないのだ、もしくは今の自分にはもうできないことなのだとかなり落ち込んだけど、今回博物館と植物園に行ってみて、趣味の範囲でも知的好奇心をもって何かを知ることを楽しめたので本当に嬉しい。旅行をしてみて良かった!

 

 

大阪一人旅日記 その1

 まずは高速バスに乗り、空港へ。景色を見ているだけでも楽しく、初めはわくわくしながら窓の外を眺めていたけど、さすがに山と木ばかりの風景が続くと眠くなる。乗り過ごさないよう、到着予定時刻より少し早めの時間にスマホのアラーム(バイブレーションのみ)を設定して寝た。

 空港に到着。飛行機に乗るのは昼前なので、まだ時間がある。大阪に着いてから博物館を見る時間を少しでも多く確保したいので、今のうちに何か食べておきたい。でも、お昼ごはんにはまだ早いのであまりお腹が空いていない。ドトールに入って、温かい紅茶とかぼちゃのタルトを注文した。せっかくだからほとんど行ったことのないロイヤルホストに行って大きいパフェでも食べれば良かったかもしれないものの、ドトールだって地元にはない。久し振りに食べたかぼちゃのタルトはやっぱりおいしくて、文学部の学生時代に時々食べていたのを思い出して懐かしかった。

 

 搭乗手続きをしてキャリーケースを預け、保安検査場も無事通過。ロビーや搭乗ゲートのあちこちに、洋蘭、ポトス、アンスリウム、カランコエ、シダ類、ヤシっぽい植物などが植わった手入れの行き届いた立派な寄せ植えがあって、たかだか観葉植物といえどお金と手間がかかっている様子に舌を巻いた。空港ってすごいや。

 おそらく10年ぶりくらいに訪れた空港という場所の非日常感が楽しくて、広いゲートを不必要にうろうろする。これから乗る飛行機が窓の外に姿を現したので、思わず写真を撮った。撮影しているのは私だけじゃなく、他にも2,3人の人が撮っていた。やっぱり撮りたくなるよね。

 機内に乗り込み、滑走路へ!いつ機体が飛び始めるかと、宙に浮く瞬間を今か今かと待つのも楽しい。

 

 座席選びはやや失敗してしまった。窓から見える景色の半分が飛行機の羽で埋まってしまったのが少し残念。でも、よく晴れていて空がきれいだった!

 飛行機に乗ると必ずといっていいほど耳が激痛に襲われるので、今回も少しひやひやした。上昇している時や、普通に上空を飛んでいる時は痛みはないものの、着陸に向けて降下し始めるにつれどんどん痛みが増し、「今度こそ鼓膜が破れるのでは」「現地で耳鼻科を探さないといけなくなったら」と毎回はらはらする。ところが、練習のすえ先日ようやく習得した耳抜きを実践し(上手くできた!)、その他にもあくびをする、水を飲む、飴を舐めるなどの対策を取った結果、なんと全く痛みがなかった。耳抜きってすごい!耳が痛くないのが嬉しいのはもちろん、耳の痛みを克服したとなれば、もうどこへだって行けると思えることがまた嬉しい。

 

 人生三度目の大阪!キャリーケースを受け取り、電車に乗り込んだ。知らない地名がたくさん目に入って、旅行先に来たんだという実感があって楽しい。周りからは耳馴染みのない関西弁が聞こえてくる。

 人から来たLINEを返すのに気を取られて、さっそく乗り換えを間違えてしまった。明日行くはずの吹田駅になぜか降り立ってしまい、Yahoo!の乗換案内アプリを頼りに慌てて計画を立て直す。お昼ごはんの時間はとっくに過ぎていて、ケーキひとつしか食べていない胃が鳴っている。電車を待ちながら、「おなか吹田」と誰かに言いたい気持ちを堪えた。

 山田駅に辿り着き、モノレールに乗り換える。ホームからは、太陽の塔が小さく見える。実物を見たのは初めてだけど、政治家が誘致したがっている今度の万博の問題を思うと、さしてありがたいものでもない気がする。

 

 万博記念公園駅に着いた。駅のコインロッカーにキャリーを入れ、いざ念願の国立民族学博物館へ!公園の広さ、太陽の塔の巨大さに慄く。こんなにでかいんだ!さすがにお腹が空きすぎて、とはいえ1分でも多く博物館を見たいので、途中にあったキッチンカーでチュロスを買った。乗り換え間違いでロスした30分が痛い。注文して揚げてもらっている最中に、メニューに揚げたこ焼きもあったことに気付く。しまった、せっかく大阪に来たんだからたこ焼きにすれば良かった。でもたこ焼きは歩きながらは食べにくいだろうし、ごみを捨てられる場所があるかは分からないし…と己に言い聞かせる。揚げたてのチュロスは熱々でおいしく、博物館までの道程をせっせと歩きながら食べた。

 

 ようやく博物館の建物に入る。障害者手帳の提示で入館料が無料だった。博物館という施設が大好きなのでお金を払いたい気持ちも強いけど、使える制度は使っておきたいし、そもそも国立の施設なんだから入館料で賄おうとせず、こういう所にこそ税金をしっかり使うべきだと思う。

 企画展ではちょうど水俣病をテーマにした展示を行っていて、熊本県民としてあらためてしっかり見ておかないとと思った。

 展示室は知的好奇心を刺激される、素晴らしい空間だった。何もかもおもしろくて、興味深くて、あまりの楽しさに顔がにやけてしまう。マスクがあって良かった。

 

 順路の最初にあるオセアニアの展示がもうおもしろく、全然先へ進めない。アボリジニの「ドリーミング」という神話の世界に、強く興味を惹かれる。ユングの集合的無意識を連想した。

 

 次はアメリカ。マニオク(キャッサバ、タピオカ、ユカとも)やカカオ、パパイヤなどの食用作物の模型が展示してあり、自分が住む地域との植生の違い、食文化の違いがおもしろい。写真を撮り損ねてしまって悔しいけど、葉にコカインが含まれるコカ(コカノキ)の資料やキャプションもあった。

 

 「ペヨーテ・ビジョン」というタイトルのウィチョル族による毛糸絵を見つけた時は、ものすごく興奮した。これを見ることができたというだけで、はるばる大阪まで来たかいがあったと思った。ペヨーテがどういう植物かは知識として知っているし、なんなら自宅で4鉢育てているし、この絵に描かれているのがペヨーテを使用して得たビジョンだろうということも分かる。南米の先住民族の宗教的な儀式でペヨーテが使われるということを色々な本で読んではいたけど、文化の中で精神作用性植物が用いられている様子をこの資料を通して実際に見ることができて、本当に嬉しかった。

 

 ヨーロッパのエリアには、ヨーロッパ各地のパンのサンプルが展示してあった。食べ物に関する文化や歴史が好きだから、こういうものは大好きだ。一度ネットのレシピを見ながら作ったことのある、フィンランドのカルヤランピーラッカもあった。

 

 「陽気な墓」と書かれたルーマニアのお墓。私は自分の墓は欲しくないけど、もし墓があるならこういうユーモアのあるものがいいな。

 

 「ヨーロッパにおける宗教・信仰の系譜─ユダヤ教、キリスト教、イスラーム─」、分かりやすくておもしろい。プリントアウトして手元に持っていたいくらい。

 

 ヨーロッパの世界各国のさまざまな食器類。グラスが主で、アイルランドにはアイリッシュコーヒー専用のグラスまである。

 

 これが全部スイカの種!アフリカのコーナーにあった展示。

 

 西アジアのコーナーにあったおもしろい展示。左からユダヤ教、キリスト教、イスラム教のそれぞれの宗教に用いられる特徴的な道具などが並べられている。

 

 地域でなく「音楽」のコーナー。色々な楽器が管楽器、打楽器、弦楽器ごとに分けられている。これらは全てチャルメラの仲間!元オーボエ吹きとしてはどうしても見てしまう。ダブルリードの楽器が世界にはたくさんあるんだなあ。しかも、ダブルリードどころでなく、リードが6枚も重ねられた楽器もあるというから驚き。

 

 ここに来て、まさか熊本県八代市の楽器を目にするとは思わなかった。

 

 「言語」のコーナーに合った表。おもしろい。

 

 南アジアのエリアの影絵人形。まだまだたくさんあった。

 

 朝鮮半島のエリア。「巫俗文化」というものを知らなかったので、興味をそそられる。

 

 中央・北アジアの帽子や靴。

 

 アイヌ文化。小学生の頃に、好きだった児童文学に出てくる「削り花」というものを見よう見まねで作っていたので、実物をこんなにたくさん見ることができて嬉しい。

 

 日本文化のコーナー。注連縄って色々あるんだな。

 

 どの展示もとてつもなくおもしろかった!あまりに楽しくてわくわくして興奮しすぎて、体温が平熱より上がったようにさえ感じた。こんなにテンションが上がるとは思わなかった。時を忘れるという感覚が久し振りで、時間が全然足りなかった。楽しかった!

 陳腐な感想かもしれないけど、世界は広いと思えて良かった。世界は広くて、本当に多様な文化が存在し、自分の知らないことも無限にあって、現代の日本社会に適応できないという自分の悩みがちっぽけなものに思えてくる。苦しみを矮小化するというよりも、そんなに悩まなくてもいいのかもしれないと思えた。

 ミュージアムショップもまたおもしろかった。当たり前だけど、福岡市の某博物館のように百田○樹なんかのヘイト本を置いていないのが良かった。当たり前だけども。世界各地のさまざまな民族や文化に対するリスペクトがきちんと感じられる博物館だった。

 

 公園内の花壇には大株のクリスマスローズが満開だった。金がかかっているなあという感想を抱いてしまう自分がさもしい。花壇に花が植わっているのは、生活や住む環境を豊かなものにしようという気概がなんとなく感じられていいなあ。

 

 万博記念公園駅近くのショッピングモールで関西風お好み焼きを食べた。表面はさくっと、中はふわっとしていておいしい。普段家で食べるのは広島風なので、焼きそばと大量のキャベツが入っていないお好み焼きがとても新鮮に感じられる。関西風をちゃんとお店で食べるのは初めてかも。

 

 電車を乗り継ぎ、今夜泊まるホテルに着く。ホテルの傍にたこ焼き屋さんがあったので、これ幸いと買ってきた。焼きすぎたものと柔らかいものとどちらがいいかお店の方に尋ねられ、焼きすぎたもので大丈夫だと答えたので、しっかり焼かれた歯ごたえのあるたこ焼きになった。これはこれでおいしいし、「おおきに」と言ってもらえたのも嬉しい。

 旅先ならではのイレギュラーな出来事(乗り換え間違い)もありつつ、初日が終了。満喫した!今日一日の歩数は約16,200歩。若干靴擦れになりかけているので、明日は絆創膏を貼ってごまかそう。

 

週間日記(2024/03/04-03/10)

 

2024/03/04 Mon.

 用事ができたので、一昨年まで働いていた園芸店に行った。知り合いに遭遇することを思うととてつもなく緊張して、人間ってこんなに緊張する生き物なんだなと他人事のような感想を抱くほどの緊張だった。こうした苦しくなるほどの緊張を味わうのは久し振りな気がする。数年前は毎日のようにあった、どきどきして頭の中が真っ白になりその場から逃げ出したくなるような不安とは少し異なり、心臓だか気道だかの辺りが詰まって息がしにくく重苦しい感じがする緊張だ。なんでこんなに緊張しないといけないんだろう、と理不尽にすら感じた。

 久し振りに訪れた元職場は、春の花苗がたくさん並んでいて、見ていて楽しかった。ミニバラ、ガザニア、シクラメン、ラナンキュラス、ルピナス、ネモフィラ、デイジー、マトリカリア、ネメシア、アネモネと色とりどりで、良い季節だなと思った。果樹苗の取り扱いが増えていて、観葉植物も相変わらずたくさんあった。植物が好きな自分にはぴったりの職場だったなとあらためて思う。パートとしてまたここで働くことも考えたけど、今の自分にはやっぱり無理だ。人付き合いに疲れきっていて、人と関わるためのエネルギーやスキルがないし、体力もなく、商品のギフトラッピングや発送手続きの際に生じるプレッシャーに耐えられるとは到底思えない。植物についての知識や興味関心を存分に発揮できる、おそらく自分にはそこそこ合っているであろう仕事だっただけに、今の自分には無理だと感じていることが悲しい。自分にできないことが問題なのか、自分にはできないと考えていることが問題なのかは分からないけども。

 帰り道には、れんげやオランダミミナグサが咲いているのを見た。美しく改良された園芸品種の花も好きだけど、こうした素朴な野の花も好きだ。食べ終わったバナナの皮に似た見た目の、れんぎょうの花も咲いていた。

 

2024/03/05 Tue.

 今月の半ばに一泊二日で一人旅に出かけることを決意したので、その計画を立てた。障害年金が手に入ったことで、もし病気になっていなかったら働いて稼いだお金で楽しめていたはずの自分の人生の埋め合わせをしたくなったことと、「まだ生きていていいよ」と行政及び世の中から認められたような気がして安心したこととがきっかけだ(そもそも、行政の仕事はすべての人に「生きていていいよ」という姿勢を示して各人に必要な支援をすることだ)。まとまった額のお金が口座にあることで、「この先まだしばらく生きていける」と思えたこともまた嬉しく、それを祝福したい気持ちもある。ひとつ楽しい思いをして、世の中にはまだまだおもしろいものがたくさんあるのだから死ぬには惜しいのだと、生きるモチベーションにもしたい。死んでしまいたい気持ちももちろん根強く残っているけど、自殺というバッドエンドを回避して今後も生きていけるようになるためには、試行錯誤して手を尽くしてみようと思っている。

 旅行先は大阪に決めている。昨年私以外の家族が大阪に行っていたのが羨ましかったのと、どうしても行ってみたい博物館と植物園が大阪にあるためだ。大阪には修学旅行や就活でしか行ったことがなく、つまり楽しい思い出がないので、自分の中でのイメージを払拭したいのもある。格安航空の方が新幹線より安いことが一番の理由だけど、空港という非日常感のある空間も楽しみたいので、往復とも飛行機で行くことにした。自分のためだけに旅行の計画を立て、旅のしおりまで作るのが本当に楽しい。生きていれば楽しいことがあり、自分は楽しませるに値する人間なんだと思えるきっかけのひとつになるような旅行ができたら嬉しい。

 

2024/03/06 Wed.

 ドラマ「作りたい女と食べたい女」のシーズン2を最終話まで観た。とても良い作品だった。同性カップルへの偏見や法の不備、異性愛者の男女同士で結婚して子をもつことが正しいのだという風潮、そうした日本社会の悪しき部分をきちんと批判的に描いてくれるドラマがテレビで放送されることが、本当に嬉しかった。物語の脇役やスパイスのような立ち位置ではなく、れっきとした主人公として性的マイノリティのキャラクターが存在していることも嬉しい。また、もしも会食恐怖症について「治療さえすれば簡単に治る病気」のような扱われ方がされていたら、通院を続けているにも関わらず10年単位で社交不安症に苦しめられている当事者としては羨ましくてやりきれないと思って危惧していたものの、ドラマ「つくたべ」に携わるスタッフの方々にそうした懸念を抱く必要はなかったことがちゃんと分かった。ひとつだけ、会社を辞めていた南雲さんが「私も頑張らないとな」といったような台詞を言った後に就職活動をしていたのが、「無職でいることは頑張っていない状態」とでも言われているようで勝手に責められたような気持ちになってしまったけど、これは私お得意の被害妄想だと思う。それにしても、作中で野本さんと春日さんが食べていたあんバタートーストがおいしそうだった。今度小豆を買ってきて炊こうかと真剣に考え始めるほど、魅力的な食べ物だった。

 Twitterのトレンドに「会食恐怖症」の文字があり、Twitterのトレンドというものは見てもまず良いことはないのだと嫌というほど理解しているはずなのに、つい見てしまった。激しく後悔した。

 夜寝る前に「今日あった3つのいいこと」を紙なりメモアプリなりに書き出す習慣をつけたいと思うのに、一日の終わりはどうしても疲れ果ててしまってそれができない。疲れと眠気で机に向かうのはおろか、スマホを持って文字を入力するのも億劫に感じられる。きちんと疲れるほど日中に活動できて、自然な眠気が訪れて寝つけることが「今日あった3つのいいこと」のひとつだとでも思っておきたい。

 

2024/03/07 Thu.

 掃除機をかけたいと思うものの、猫達がそれぞれお気に入りの椅子の上で気持ち良さそうに寝ているので、掃除機の騒音で起こしてしまうのがどうにもしのびない。結局掃除機はかけたのでちりぢりに逃げられてしまったけど、しばらくするとまた各自思い思いの場所でぐうぐう寝始めていた。「幸せそうに寝ているから起こしたくない」と思える存在が身近にいるというのは、かなり嬉しいことだと思う。

 せっせと家事をやっつけてしまうと、妙に疲れた。なんとなく気が向いて、お湯で粉末を溶かすタイプのオニオンスープを飲んでみたら、やたらおいしかった。「気分が落ち込んだ時にすることリスト」に、温かいスープを飲むことを加えておきたい。

 地元産のレモンが冷蔵庫にあったので、午後は張り切ってレモンタルトを作った。初めて作るレシピだったのもあり、タルト生地が柔らかすぎて少し不格好になってしまったけど、味はとてもおいしいものができあがった。さくさくのタルトに甘酸っぱいレモンのクリームがよく合う。レモンの輪切りのコンフィを並べ、庭で摘んできたレモンバームの葉も飾ると、なんとなくそれらしい見た目になった。作るのにはそれなりに時間がかかったけど、食べるのはあっという間だった。

 プランターのチューリップが、紫色のものだけ咲いた。他の色はまだつぼみのままだ。

 

2024/03/08 Fri.

 とらふくの写真を使ったLINEスタンプの第2弾を仕上げたので、LINEクリエイターズマーケットにアップロードして審査をリクエストした。

 久し振りに床に伸びて、少し昼寝をした。精神科の薬を増やしてからは、日中に疲れて横になる時間がかなり減ったと思う。

 1時間ほど本を読む。『私の生活改善運動』(安達茉莉子、三輪舎)を読み始めた。表紙のイラストはもちろん、装丁もとてもかわいい。内容も、自分が幸せでいるために無理なくできる行動のヒントがたくさんあって、読んでいると「私も私なりに私を大事にしよう」と思えてくる。また、自分なら「嬉しい」だの「羨ましい」だのといったありふれた形容詞で片付けてしまうような感情が、想像力を掻き立てられるユニークな表現で描写されていて、読んでいて楽しい。

 

2024/03/09 Sat.

 LINEスタンプの審査が通って、今日から販売を開始した。さっそく家族のLINEグループで使っている。

 夜に一人で4000歩ほど散歩してきた。目的としては散歩というよりウォーキングと言った方が正確かもしれないけど、散歩という言い方のほうが肩の力が抜けた気楽な感じがするので好きだ。何か考えているようでいて、何も考えていないような気もするぼーっとした状態で黙々と歩き続けると、家に帰り着く頃には頭の中がすっきりしているので気分が良い。歩きながら、昼間に読み終えた『私の生活改善運動』に影響を受けた考え事の整理をした。著者の引っ越しのくだりを読んだ時、自分が幸せでいられる場所に住む権利が私にもあること、住む場所を好きに選べる権利があることを思い出した。今の私は自活できるだけの稼ぎを働いて得ることができないから、実家でくすぶっていることしかできないと思い込んでいたけど、私にだって好きな場所に住む権利がある。車を運転しなくても暮らしていける場所で自由に生活したい、親に干渉されない生き方をしたいと改めて思った。普段、私は大好きなゲームやミュージカルの曲を、親に聞かれないように一人でこそこそと聴いている。父は大好きなクラシック音楽を誰にかまうことなく毎日大音量で楽しんでいるのに、どうして私は後ろめたいことでもするように隠れて聴いているんだろう。「音楽といえばクラシックでしょう、クラシック以外の音楽はちょっとね(笑)」とでも言いたげな両親のもとで育ったせいか、クラシック以外のジャンルも好きだとは言えない自分がいる。外出をすればどこで何をしていたのか弁明しなければならないような圧があるし(私の被害妄想かもしれないが)、珍しく電話をすれば誰と話していたのか何の気なしに尋ねられる。20数年前に建てられた我が家は良く言えばとても開放的な造りで、部屋と部屋を隔てる壁がほとんどなく、吹き抜けもあって、家のどこにいても家族の声や物音が聞こえる。一人で部屋に閉じこもることも、人に聞かれずに電話をすることも難しい。でも、家の中でくらい好きな音楽を堂々と楽しみたいし、最低限のプライバシーを保ちたい。先月応募し損なった求人がまた出たらリベンジして、そこで働き続けてお金を貯めて、いつかは一人で街中へ出て行きたいと前向きに考え始めた。その計画を近い未来に実現できるかどうかはさておき、そういう可能性がない訳ではないこと、実家を出て好きな場所に移り住む権利が自分にもあるのだということを思い出せたのは嬉しい。

 

2024/03/10 Sun.

 知り合いの人達との食事会に行った。予定が決まった時から、胃の辺りがぐるぐるするような、気道に何か物でも詰まっているような、変な緊張がずっと続いていた。仲良くしたいし、もっと仲良くなりたいから行きたい気持ちはもちろんあるものの、何かしらの失敗をしでかして軽蔑され距離を置かれる恐怖を思うと行きたくない気持ちもあり、参加についてはかなり迷った。家族以外の人と会って話す経験値を積みたい気持ちもあれば、今の自分には耐えきれないストレスになりうるんじゃないかという気持ちもある。結局、声をかけてくれるということは嫌われてはいないんだろうと己に言い聞かせ、参加することを決めた。無事に食事会が終わって、「あの時もっとこうしていれば」「あれはちゃんと意図が伝わっただろうか」と気に病む要素は多々あったものの、「もうあの人達に顔向けできない」と思わざるをえなくなるような致命的な失態はやらかさずに済んだ(と思う)。人との食事くらいでどうしてこんなに疲れるのかと情けない気持ちになるほど疲弊したけど、かつては「人のいる所でものを食べるのが怖いから、フルタイムの仕事に就けない。働けないから死のう」とまで思い詰めていた時期が長かったので、今日振り絞ったなけなしの勇気を褒めてやろうかなという気もする。今の私にできる限りのベストは尽くした。